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□君の場所A
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俺は…
心の中で10代目に別れを告げ、生まれ故郷の地に降り立った…
正直、ボンゴレ10代目の右腕になるまで帰るつもり無かったから…
こんなに早く帰ることになったのは不本意だが仕方ない。
これからどうするか、を考えながら懐かしいイタリアの街を歩いていると、後ろから声を掛けられた気がして…
振り返ってみると…
「やっぱり…隼人様…」
そこに立っていたのは…
「…トー…ニ、オ…」
トーニオは俺がまだ城に居た時の、当時の幹部の息子で…
城で行ったパーティーで何回か見掛けた事があった…
当時の俺は…
思い出したくもない…
イヤな事を思い出し、不快な気分になった俺に対して、トーニオはにこやかな顔で
「隼人様…見違えました…城を出たと聞いて随分心配しましたよ…お元気そうで何よりです…」
白々しく俺にそう言ってきて…
俺はもう…城に居たときの話しをしたくなくて…
もう用は無いだろう、という素振りで歩き出そうとした瞬間、腕を掴まれ…
威嚇のつもりで睨んだ俺に対して、トーニオはまだ白々しい造り笑顔を張り付けたままこう言ってきた…
「ボスからの伝言です。“我々に従えば、ボンゴレ10代目には手を出さない”との事です。どうしますか隼人様?ボスは貴方の事を大変心配していらっしゃいましたよ?」
俺の頭は真っ白になり、トーニオの言葉が耳に入って来なかった…
「ど…して、10…代、目の…事を…」
どうしてコイツ等が10代目の事を知ってるんだ…
「我々もマフィアですからね。其れなりの情報網は在りますよ…だから、あなたがイタリアに帰ってくる事も分かっておりました。」
俺は…軽率な行動を取った自分を今更ながら悔やんだ
でも…
言うことを聞かざる得ない…
10代目を盾にされては…
どうする事も出来ない…
俺はトーニオに連れられ城に向かった…
俺が住んでた城は其れなりに歴史が在り、イタリアでもちょっとした観光地になっていて。
見た目は美しいが、ただ其れだけだった…
俺には、牢獄でしかなかった場所…
今の気分は死刑を宣告された囚人のようだ…
城に着くとすぐに親父の書斎に通されて…
俺はもうボンゴレとは関係無い人間だと言うことを親父に分からせるしかなかった…
悲しいけど、俺自身認めるしかないんだ…
そうしなければ、10代目にご迷惑を掛ける事になる…
俺はまた…
10代目に迷惑を掛けてしまう…
こんなに離れた場所にいるのに…
それでも迷惑を掛けてしまう自分が心底嫌になる…
暫くすると親父が入ってきて…
「おぉ、隼人…大きくなったな。そして…美人になった…お前は母さん似だったからな…」
そう言う親父の言葉に悪寒がした…
いや…言葉じゃない…
あの眼だ…
ギラギラとして、狂気のようなものが見え隠れする…
そんな、恐ろしい眼だった…
肌が…粟立つのを感じた…
「俺はもうボンゴレとは何の関係も無い人間だ…だから…10代目には手を出すな!!」
そんな俺を見て、親父はクックッと笑いながら
「じゃあなぜ此処に来た?手を出して欲しく無いから来たのだろ?お前が私の言う事を聞けば手出しはしないから安心しなさい。」
そう言いながら俺を見る眼はまるで…
捕食者の…
そう…
まるで獲物を捕まえた肉食獣のような眼をしてて…
俺は…
親父が恐いと、心の底から思った…
言う通りにしなければ…
10代目や、他のみんなに危害が及ぶ…
その眼を見て確信した…
俺は…
頷くしか無かった…
俺が…
頷く事で、10代目をお守り出来るのなら…
それで良かった…
これが…
ボンゴレ10代目の、右腕としての最後の仕事…
「何を…すればいいんだ…」
そう問いかける俺に、親父は一つ約束をしてもらう、と言ってきた…
「お前がもし、自分で命を絶つような事をすればその時は…ボンゴレ10代目、及び守護者を全員殺す…いいね?」
何故そんな事を言い出すのか分からなかった…
俺はもうボンゴレの人間では無いのに…
でも…
何があっても10代目の命を危険に晒す事は出来ない…
俺は…
それを約束した…
「いい子だ隼人。お前は小さい頃から聞き分けが良かったね…」
そう言いながら頭を撫でる親父の手が気持ち悪くて…
怖くて…
俺は…
これから、どうなるか分からない不安に…
身体の震えが止まらなかった…