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□君の場所G
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「ア"ア"ア"ア"ア"ア"…ア"、ア"ア…"ア"…ア゙…ア…」

獄寺の手に握らせたナイフを俺の腹に突き刺した瞬間…

獄寺の喉からは絞り出すような、悲しげな声が上がり…

その悲痛な叫びとも言える声で我に返った俺は…

血が滴り、赤く染まったナイフを握る獄寺の手を放した…

「ご…くで、ら…」

獄寺を見るとその顔からは笑顔が消え…

まるで今の状況が分かってるかのように顔を歪め、涙を、零し…

そして苦しそうに言葉を発した…

「ヤ…ダ…ヤ、ダ…ヤ、メ…ロ…ヤ…ダ…ヤ、ダ…ヤ、ダ、アアアァ!!」

絞り出すように声を上げる獄寺…

「ごくで…ら…お前…」

その痩せコケた頬を両手で挟み顔を上げさせると、その緑碧は悲しげに揺らめいて…

明らかにさっきまでの状態とは違っていた…

「どうしたの!?今の声は何!?」

獄寺の声を聞きつけたみんなが一斉に部屋に入り、俺達を見て驚きの表情を浮かべた。

「ちょっ!!山本!!血が出てるじゃん!!」

俺の腹から染み出た血を見てツナが慌てて走り寄ってきて…

「ぁ…お、れ…俺、は…獄寺を…」

ぼやける視界で自分の手を見てみれば…

手はガタガタと震えて…


俺は…

獄寺と一緒に死のうと思った…

笑顔で死にたがる獄寺と一緒に…

この世界から、消えてしまおう…

それが、獄寺にとって幸せならと…

俺は…

なんて、事を…

「あ…ぁ…俺は…」

ハッとして獄寺を見るとまだ悲痛な声を上げて…

「落ち着け隼人!!落ち着くんだ!もう大丈夫だから!!」

オッサンに押さえ込まれても頭を左右に振り叫び声を上げる獄寺…

「ア"…ア"ァ"…ァ"ァ"…ァ"…ヤ…モ、ト…」

そして、俺を必死に呼ぶ獄寺の声…

その手にはまだナイフが握られて…

俺の血が…

柄を伝って獄寺の手を汚していた。

俺は獄寺の手からナイフを取ると床に投げ捨て…

ゆっくりと獄寺を抱き締めると…

その身体は可哀想なくらい震えて…

怯えていた…

「獄寺…ごめんね…俺は大丈夫…大丈夫だから…ごめん…ごめんね…」

俺の言葉が届いたのか…

獄寺の手がソロソロと俺の顔に這わされて…

確かめるように輪郭をなぞっていく…

そして安心したように…

獄寺はそのまま気を失った…




「何があったか知らないが…兎も角お前の傷も見なきゃな…」

そう言われてそのままだった事を思い出す。

「取り敢えず、傷見せて見ろ…」

オッサンに傷を診せると"こんなの絆創膏でも貼っとけ!!"と怒鳴られて…

こんなに軽い傷で済んだのは…

獄寺のお陰だった…

獄寺が…

腹にナイフを突き刺した瞬間、腕に力を入れて引いてくれたから…

こんな傷で済んだんだ…

この弱りきった身体にはそんな力なんか残ってない筈なのに…

こんなになってまで、お前は俺やツナを一番に考えて…

そんなお前を俺は…

殺そうと、した…

「ごめん獄寺…ごめん、な…」




「山本…何で、あんな事を…?」

今は穏やかな寝息を立てて眠る獄寺を見ていると、ツナにそう問われて…

「あぁ…ホントにどうかしてたよ…獄寺を殺して自分も死のうなんて…」

ホントにどうかしてた…

死にたいなんて、獄寺の本心じゃない事くらい分かってた筈なのにな…

でも良かった…

獄寺が無事で…

ホントに…

良かった…

「山本…また明日から、笑顔で頑張ろう…」

そう言ってツナは自分の袖で俺の涙を拭ってくれて…

そうだな…

明日から、また笑顔で頑張らないとな…













や、だ…



やま、も、と…






おれ、は…



また…



大切な、人を…



失った、のか…





俺は…



また…




大切な人、を…





殺して…





しまった、の、か…






や…だ…





や、だ…



やだ…






やだ!やだ!いやだ!!
いやだ!!!!






やまもと!!




やまもと!





やま、も、と…






や、ま、も、と…







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