短編夢

□彩果て
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私の世界の、とても大切な部分が一つ、無くなった。





病院へ走った。

初任務を終えて、もう疲れていた。出来ればシャワーを浴びてすぐ寝たかった。

それから、報告するつもりだった。
正式に入隊が認可されたから、一般兵と同じ規約だけ守っていれば良くなったって。だからもう、家に帰れるの。お母さんにも弟にも会えるの。その代わり一般兵と同じ扱いだから任務が入って忙しくなるけど、私、いっぱい頑張るから。辛い事、いっぱいあるだろうけど、私は頑張れるよ。

だって守りたい人がいるから。

「お母さん!!」

真っ白の病室、真っ白のベッド。
ねぇ、何で、お母さんはこんなところで寝てるの?

ねぇ、何で、もう私を見てくれないの?

何度も呼んだ。お母さん、お母さんお母さんお母さんお母さんお母さん、私だよ、背が伸びたでしょ?声もちょっと変わったよ、お母さんに似てきたって言われたよ。
お母さん、私は貴女の娘です。もう、貴女が望んでくれた、普通の女の子じゃないけど、お母さんの娘です。

ねぇ、お母さん。
私が連れてきた恋人を殴るって、弟が連れてきた恋人を可愛がるって、お父さんとずっと仲良しでいて、孫に囲まれて、幸せだなぁって、笑いたいって、言ったじゃない。

私、それ叶えるから。素敵な恋人を作って、弟の恋も応援して、親孝行いっぱいして、お母さんみたいな母親になる。お母さんみたいに幸せになる。

だから、お母さん。
起きて、私の名前を呼んで。

嫌だよ、こんなお別れ嫌だよ。最後にお母さんと話した事、私覚えてないの。最後にお母さんに頭撫でてもらった日を、私思い出せないの。いっぱい、いっぱい愛してもらったのに、お母さん、私、何一つ。




置いていかないで。






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