Novel

□雨と君
1ページ/6ページ



ザーッ…



急に降り出した雨。
雨が降ると、アイツの泣き顔を思い出す。



『会いたいよぉ…まもちゃん…』



泣きながら、声を震わせて、か細い声で、他の男の名前を呼ぶ。




『…俺じゃ…駄目か?…』



そんな事、言うつもりなんてなかった。ずっと、見守っているだけのつもりだった。…それなのに、今にも消えてしまいそうなお前の姿を見ていたら、いてもたっても居られなくて、俺がお前の隣に居たいって、つい口にしちまった。



また泣いてんじゃねぇだろうな?…おだんご…。



…って、もぉ帰ってるよな。…ん?あれは……



「おだんご!?」



「あ、星野!」




びしょ濡れになって、タバコ屋の屋根で雨宿りする彼女。考えてる真っ最中に会えるとは思わず、同様する。



「お、お前どうしたんだよ?こんなとこで。」



「帰ってたら急に降り出しちゃって…傘持ってなかったから。」



「天気予報、見てなかったのか?」



「あたしに、そんな時間、あると思う!?」



「…いや、遅刻魔のお前にあるわけねぇな(笑)」



「あ〜!ひど〜い!」



そんな他愛ない会話のやりとりが、楽しくて堪らない。コロコロ変わる表情が可愛くて、ジッと見つめる。


「な、何よっ!?////」



「いや、なんでもねぇよ?」


「見すぎだからっ///それより、星野、傘あるんだから、いいのよ。付き合わなくても。」



「たまには、いいじゃん。こーゆーのも。迷惑?」



「そっ、そんな事…ないけど…////」




困るのが分かってて、わざと聞いてみる。予想通りの反応に満足していると…。



「ックシュン!…」




「おだんご、寒いのか?」


「さすがに、ちょっとだけね。だって、ほら、見てよぉ〜ビショビショなんだもん。」



「!!////」



こいつは、ほんっとに天然すぎて困る……。透け透けだっつーの!そんな姿、他のヤツに見せてたまるかよ!


バサッ



制服の上着を脱ぎ、うさぎにかける。星野のいつもの、金木犀の香がする。



「これ、かけとけよ。」



「ありがと…。」



「止みそうもねぇし、このままだと風邪ひくし、走るか!」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ