Novel
□雨と君
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ザーッ…
急に降り出した雨。
雨が降ると、アイツの泣き顔を思い出す。
『会いたいよぉ…まもちゃん…』
泣きながら、声を震わせて、か細い声で、他の男の名前を呼ぶ。
『…俺じゃ…駄目か?…』
そんな事、言うつもりなんてなかった。ずっと、見守っているだけのつもりだった。…それなのに、今にも消えてしまいそうなお前の姿を見ていたら、いてもたっても居られなくて、俺がお前の隣に居たいって、つい口にしちまった。
また泣いてんじゃねぇだろうな?…おだんご…。
…って、もぉ帰ってるよな。…ん?あれは……
「おだんご!?」
「あ、星野!」
びしょ濡れになって、タバコ屋の屋根で雨宿りする彼女。考えてる真っ最中に会えるとは思わず、同様する。
「お、お前どうしたんだよ?こんなとこで。」
「帰ってたら急に降り出しちゃって…傘持ってなかったから。」
「天気予報、見てなかったのか?」
「あたしに、そんな時間、あると思う!?」
「…いや、遅刻魔のお前にあるわけねぇな(笑)」
「あ〜!ひど〜い!」
そんな他愛ない会話のやりとりが、楽しくて堪らない。コロコロ変わる表情が可愛くて、ジッと見つめる。
「な、何よっ!?////」
「いや、なんでもねぇよ?」
「見すぎだからっ///それより、星野、傘あるんだから、いいのよ。付き合わなくても。」
「たまには、いいじゃん。こーゆーのも。迷惑?」
「そっ、そんな事…ないけど…////」
困るのが分かってて、わざと聞いてみる。予想通りの反応に満足していると…。
「ックシュン!…」
「おだんご、寒いのか?」
「さすがに、ちょっとだけね。だって、ほら、見てよぉ〜ビショビショなんだもん。」
「!!////」
こいつは、ほんっとに天然すぎて困る……。透け透けだっつーの!そんな姿、他のヤツに見せてたまるかよ!
バサッ
制服の上着を脱ぎ、うさぎにかける。星野のいつもの、金木犀の香がする。
「これ、かけとけよ。」
「ありがと…。」
「止みそうもねぇし、このままだと風邪ひくし、走るか!」