遥かなる時空の中で
□ナミダ。
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「まさ・・・臣・・・?」
いつもは俺との再会を満面の笑みで迎えてくれる九朗も,今日は違った。
恐ろしい程に澄んだ橙色の瞳を揺らして俺をみつめてる。
顔にはあきらかな困惑の表情を浮かべて。
あぁ・・・やっぱり,困らせちまった。
だから逢いたくなかったんだ。
お前を困らせるのが・・・嫌だったんだ。
九朗・・・・・・
「将・・臣・・何故こんな所に・・・」
「・・・・・。」
白い頬についた返り血を反射的に拭おうと手を伸ばす
。
だが,その手を俺は寸でのトコロでおろした。
今がどういう時か思い出せ。
そう自分を叱咤して。。
「まさお・・・」
「九朗。」
俺は九朗の言葉を遮って口を開いた。
逢っちまったんだ。
しかたねェよ・・・・・。
もう,無理だ。
隠すコトなんかできねェよ。
もう・・・・終わりだ
「九朗。俺は・・・・」
「・・・・?」
「俺は・・・・・・・・・。」
――――――――――還内府だ――――――――――
俺はそう,九朗に告げた。
九朗の顔がみるみる青ざめていく。
真っ直ぐに俺のコトを見ていた橙色の瞳が,地面へと落ちていく。
そんな表情も,可愛いと思った。
ずっと傍にいたいと思ったヤツの顔だ。
ずっと傍にいて,同じ時間を分かち合いたいと思うほど愛しかったヤツの顔。
可愛くないなんて,思うはずがなかった。
「・・・・・お,お前は・・・・」
九朗の声が震えている。
もう一度俺に向けた瞳は少し曇っていた。
「・・・お前が・・・・」
だんだんと声が小さくなってゆく。
九朗は一度ゴクリと唾を飲み込むと,泣きそうな声で俺に言った。
――「お前が・・・・俺の・・・・敵・・・?」――