遥かなる時空の中で

□ナミダ。
2ページ/8ページ

「まさ・・・臣・・・?」

いつもは俺との再会を満面の笑みで迎えてくれる九朗も,今日は違った。
恐ろしい程に澄んだ橙色の瞳を揺らして俺をみつめてる。
顔にはあきらかな困惑の表情を浮かべて。

あぁ・・・やっぱり,困らせちまった。
だから逢いたくなかったんだ。
お前を困らせるのが・・・嫌だったんだ。
九朗・・・・・・

「将・・臣・・何故こんな所に・・・」
「・・・・・。」

白い頬についた返り血を反射的に拭おうと手を伸ばす

だが,その手を俺は寸でのトコロでおろした。
今がどういう時か思い出せ。
そう自分を叱咤して。。

「まさお・・・」
「九朗。」

俺は九朗の言葉を遮って口を開いた。
逢っちまったんだ。
しかたねェよ・・・・・。
もう,無理だ。
隠すコトなんかできねェよ。
もう・・・・終わりだ

「九朗。俺は・・・・」
「・・・・?」
「俺は・・・・・・・・・。」

――――――――――還内府だ――――――――――

俺はそう,九朗に告げた。
九朗の顔がみるみる青ざめていく。
真っ直ぐに俺のコトを見ていた橙色の瞳が,地面へと落ちていく。
そんな表情も,可愛いと思った。
ずっと傍にいたいと思ったヤツの顔だ。
ずっと傍にいて,同じ時間を分かち合いたいと思うほど愛しかったヤツの顔。
可愛くないなんて,思うはずがなかった。

「・・・・・お,お前は・・・・」

九朗の声が震えている。
もう一度俺に向けた瞳は少し曇っていた。

「・・・お前が・・・・」

だんだんと声が小さくなってゆく。
九朗は一度ゴクリと唾を飲み込むと,泣きそうな声で俺に言った。


――「お前が・・・・俺の・・・・敵・・・?」――
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ