遥かなる時空の中で

□ナミダ。
3ページ/8ページ

「あぁ。俺はお前の敵だ。九朗。お前は源氏の人間。俺は平家の人間。――世間ではこれを,敵同士っていうんだろうな。」

泣きそうな声で問いかけてきた九朗に対して,俺はあっけらかんとした口調で答えた。

「・・・・・。」

九朗から答えは返ってこない。
あたりまえだな。
俺はコイツを騙してたんだから。
嫌われて,当然なんだ。

「っ・・・・・」

暫く俺を見つめていた九朗だったが,もう一度口を開きかけた途端,瞳からナミダが溢れてきた。
それを拭おうともせずに俺を・・・あの橙色の瞳でみつめて言葉を発した。

「お前はッ・・・お前は俺が敵だということを,わかっていたんだろうッ?!
なら,何故ッ・・・何故俺に好きだと言ったんだ!!!!」

九朗のナミダは止まらない。
というより,止めようとせずに俺に向かって叫んでくる。
俺はというと・・・・そんな九朗に気おされて何も
言えなくなっちまっていた。


「何故・・・・何故ッ・・・っ・・・・」

「くろ・・・」
「何故ッ!!」

何か言おうとした俺を遮って,九朗が声を張り上げた。

「何故・・・・何故・・・」


―――――「何故俺を抱いたんだ・・・・ッ」―――
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ