遥かなる時空の中で
□ナミダ。
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「あぁ。俺はお前の敵だ。九朗。お前は源氏の人間。俺は平家の人間。――世間ではこれを,敵同士っていうんだろうな。」
泣きそうな声で問いかけてきた九朗に対して,俺はあっけらかんとした口調で答えた。
「・・・・・。」
九朗から答えは返ってこない。
あたりまえだな。
俺はコイツを騙してたんだから。
嫌われて,当然なんだ。
「っ・・・・・」
暫く俺を見つめていた九朗だったが,もう一度口を開きかけた途端,瞳からナミダが溢れてきた。
それを拭おうともせずに俺を・・・あの橙色の瞳でみつめて言葉を発した。
「お前はッ・・・お前は俺が敵だということを,わかっていたんだろうッ?!
なら,何故ッ・・・何故俺に好きだと言ったんだ!!!!」
九朗のナミダは止まらない。
というより,止めようとせずに俺に向かって叫んでくる。
俺はというと・・・・そんな九朗に気おされて何も
言えなくなっちまっていた。
「何故・・・・何故ッ・・・っ・・・・」
「くろ・・・」
「何故ッ!!」
何か言おうとした俺を遮って,九朗が声を張り上げた。
「何故・・・・何故・・・」
―――――「何故俺を抱いたんだ・・・・ッ」―――