遥かなる時空の中で

□ナミダ。
5ページ/8ページ

「九朗。俺はお前を愛してる。
 欲望の捌け口なんかじゃねェ。マジで愛してんだ。」
「ッ!!」

コレが俺の,伝えたかったコトだ。
俺の,九朗に対する真の想い。
結果的には俺は九朗に還内府・・・平家側の人間だってコトをいわずに,嘘をついて付き合ってたコトになっちまったケド・・・・それでも・・・・
俺は九朗のコトをマジで愛してる。

「そんなのッ・・・・く,口先だけなら簡単に言えることだッ!!」
「九朗」
「ッ・・・!!嘘だッ!!」
「嘘じゃない。」
「ぅそッ・・・・!!」
「九朗!!」
「っ・・・・・」

俺が少し強い口調で言うと九朗が口を噤んだ。
もう一度,九朗の橙色の瞳を見つめて言葉を発す。

「愛してるぜ。九朗。」
「・・・・!!」

九朗の顔が,どんどん項垂れてゆく。
頬がすこし赤く染まっているような気がする。
これは,嬉しい変化だと思っていいのか?
もう,ナミダは流れていない。
俺の好きな,澄んだ橙色の瞳に戻っている。

「九朗。」

その変化が嬉しくて,おもわず笑っちまった。
だが。
ふと九朗の肩の向こうから鋭い矢が飛んでくるのが目に入った。
あきらかに九朗を狙ったモノだ。

「九朗ッ!!!」

その時の俺に,考えてる暇なんかなかった。
ただ,九朗を守るコトしか頭になくて。
咄嗟に俺は,九朗を抱え込んでいた。


   ドスッッ


「ぐぁっ・・・!!」

「まさ・・・おみ・・・・?」

九朗を抱え込んだ直後,俺の胸に鋭い痛みが奔った。
ガクッと膝が崩れる。
胸から何か熱いモノが溢れ出てくるのを感じた。

「将,おみ・・・・?」

「将臣ッ!!」

「将臣ッッ!!!」

九朗の叫ぶ声が聞こえる。

「将臣ッッッ!!!!」



――――――――――「将臣ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッッッ!!!!!!!!!」――――――――――
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ