キマグレSS部屋
□乙女たちの午後
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「あの…、女神?」
「はい?」
向かい合って頬杖をつき、儚げに微笑む少女に、彼女に仕える黄金聖闘士乙女座のシャカは、心の中で思った。
―――あまりじっと人の顔を見つめないでもらいたい。
先刻、女神が直々に自分の事を呼ぶので、何かと思ってきてみれば、あれからずっとこの調子。
「女神」
「なぁに?」
「なにか御用があったのではないのですか? ないのならば帰りますよ」
本当に立ち上がりかけたシャカに、さすがの沙織も慌てた。
「ちょ、ちょっと待って…。ごめんなさい、つい…」
その語尾の二文字に引っ掛かりを覚えて、シャカは振り返った。
「“つい”、なんです?」
女神は微笑んだ。
「あまりにも貴方が美人なので見とれていたの。ついでに、女装なんかさせたら、可愛いんじゃないかしら、って、つい」
シャカはゆっくりと自分が今まで座っていた椅子に戻ると、盛大にため息をついた。
―――これが、否、この御方が、これから我々が支えていく地上の女神か。
よみがえった教皇シオンとその候補アイオロスはちゃらんぽらん。教皇補佐のサガは傷つきやすいというか、早い話が扱いづらい。しかも、その下につく黄金聖闘士たちは、自分以外揃いも揃って変人の集団といっても過言ではないだろう。(確実にシャカもその一員であるが)
大丈夫か地上は―――。
渋い顔をするシャカに、当の女神は、あーっと声を上げる。
「シャカ、ため息をつくと、幸せが逃げて行くんですよ」
―――最近不安である。