キマグレSS部屋

□ゆるして。
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去って行く、足音がする。
一人その場に取り残された少年は、無駄と知りながら小さな手を伸ばした。

―――まって………。

去っていく人影は、少年の予想に反して立ち止まり、ゆっくりとこちらを振り返る。冷たい表情のまま、彼は言った。

―――赦さない。

いつの間にか、少年を取り囲むように、無数の人影があった。どれも、少年の知っている顔。


少年ニ裏切ラレタ、唯一無二ノ、親友。

少年トソノ親友ヲ敬愛シ、一夜ニシテ罪人ノ身内トサレタ、親友ノ弟。

少年トソノ血ヲ分ケタ、タッタ一人ノ、兄弟。

少年ヲ信ジ、知ラズノウチニ殺人ヲ犯シタ、年下ノ同僚。

少年ヲ導キ、少年ニ殺サレ、弑サレタ、先ノ皇。

少年ヲ慕イ、先ノ皇ニ光ヲ見ツケ、ソノ光ヲ失ッタ、幼ナ子。

そして。

本来少年ガ守ルベキ立場ノ、尊キ少女―――。


それは全て、少年が過去に犯した罪の被害者。

無数の人影は、少年に言った。

『赦さない』と。

その声はやがてひとつになり、少年の頭の中に反響して渦巻く。

『赦さない』
『お前は誰にも許されない』
『その罪はお前が生きる限り』
『否、死して尚』
『お前に千の責め苦、万の責め苦を』
『お前は永久に罪の檻から抜け出せぬ』


―――いやぁぁああっ!!
少年は、両手を耳に押し当て、がっくりと地に膝をついた。
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