キマグレSS部屋
□藤色幻想詩
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―――これは誰の夢? 春の藤色、少年の記憶。
その少年は、白い毛布の中で泣いていた。
部屋は明るく、揺れる灯火の中で彼の大切な師は、少年に近寄った。
師匠は、少年の頭を撫でながらベッドの端に座る。
「―――こわいゆめを、みたの」
彼の師匠は、ただ聴いていた。
「お師匠様が、いなくなっちゃうの……」
少年のものより大分大きい手のひらに涙をすくわれ、仰いだ師は、とても大きく見えた。
昔、少年が初めて師のもとを訪れたときから見続ける夢―――。
『夢だよ』
そんな返事がほしかった―――。
『私はずっと、お前と共に居よう』
いつものように、苦笑いして言う師を期待していた―――。
―――しかし。
「お前は賢い子だから、私との約束、きちんと守れるよな―――?」
そして、少年の時は流転する―――。
【目前に広がる菫の糸。
こちらに微笑みかける少女は、現在(いま)の彼に、何を語りかけるのか―――?】