学パロスペース
□クラスマッチ・バスケの場合
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ダン、と、ボールが床を叩く音が響いた。
直後、鋭くホイッスルが聞こえた。
一瞬だけ静まり、それから大きくなる歓声。
応援スペースで得点版に釘付けになったカミュの目は、二桁の数字をただ読んでいた。
25対24。
―――負けた。
笛の鳴る直前、一瞬の隙、親友のミス。
春先に行われる、クラスマッチ。生徒たちは、皆それぞれの得意種目でクラスの仲間たちと協力し合う。
練習にも、応援にも、準備にさえ力が入る。
そんなクラスマッチ終盤のバスケの試合。
この試合に勝てば、クラスの優勝確実―――、そう勇んで、勝つと宣言して、ミロはコートに立ったはずだった。
スコア表は見たくない。
自分達のクラスは今ので2位以下に落とされたはずだ。
体育館の外へ向かった親友を追った。
「………ミロ…」
木陰の水飲み場、その人目につきにくい場所に、彼は立っていた。
「カミュ………」
一瞬だけこちらを見たミロは、すぐに項垂れた背中をこちらに向けてしまった。
カミュは目を閉じた。
ミロはいつも明るくて、素直過ぎる面もあって、喜怒哀楽がはっきりしていて、何より元気がありすぎるのが取り柄だ。
しかし、今目の前にたたずむ背中はいつもの彼ではなくて。
そんな彼を見ているのが辛かった。
背中に触れると、彼の髪もTシャツも湿っていた。
「カミュ……、俺…」
弱すぎる背中が今にも崩れそうで、ミロの胸の前で腕を交差させる。
首もとに汗の粒を感じたが、構わなかった。
「ミロ……、まだ、最後の試合が残ってるさ」
やつらに任せよう。
うん、とつぶやいたミロの声は、心なしか震えていた。
「すまんカミュ、………もう少しだけ、このままでいいか?」
震える肩に、抱き締める腕の力を強めて、汗ばむ彼の肩口に顔を寄せて、こぼれる涙には気づかないふりして。
「今だけだぞ……」
誰にもこの場を見られないことを願う。