学パロスペース
□とある冬の日
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「寒い…」
「言われなくても解ってますよ」
コートが手放せない今日この頃。
低体温気味になりやすいムウは、みんなより一足先にマフラーなどの防寒具をつけている。
そんなムウの、手袋をはめた右手を取り、そっとそれを外す。
「っ、何するんですか、リア」
外気にさらされ、顔をしかめたムウの冷たく冷えた手を、あたたかい自分の手で包み込み、そのまま自分のコートのポケットに入れた。
「このほうが良いだろ?」
「十分経ったら、左手もお願いします」
計画的な発言に聞こえるが、俺にはほんのり紅色に染まったムウの顔が見える。
口は悪いが、可愛いやつだ。
ムウの腰に手をやり、引き寄せて向かい合うと、潤んだ大きな瞳が見上げてくる。
今なら通りに誰も居ない。
ゆっくりと引き合う二人の唇。
そして―――。
「ちょっと待ったぁぁあああっ!!」
「ぅおっ」
ムウは全速力でアイオリアを押し返すと、そのまま自分も三メートルほど後ずさった。
「何だよっ、良いところだったのに」
「ムード壊したのはそちらじゃないですか」
「俺が何をした」
「唇です」
「は?」
ムウはため息と共に肩を落とした。
「季節が季節ですから、乾燥するのも無理はないですが、少しはお手入れしてください」
離れてしまった右手でコートのポケットを探ると、リップクリームをアイオリアに差し出す。
「これ使ってください」