学パロスペース
□とある冬の日
2ページ/2ページ
しかし、当のアイオリアは「いらん」と一言。
「そんな女っぽいもの使えるか」
ムウは再度ため息をついた。
アイオリアの悪い癖だ、と思う。
「これだからあなたって人は……っ!」
「何だよ?」
「もういいです」
踵を返したムウは、そのまま歩き出した。
後ろから後を追ってくるアイオリアの気配を感じる。
折角、二人の都合が合って一緒に帰れるのだ。
折角、周りに誰も居ないのだ。
さっきの続きもある。
こんなことで喧嘩してどうする。
気を落ち着かせる意味も込めて、ムウは自身の唇にリップクリームをつけた。
「なあ、おい、ムウ。
少しは機嫌直せよ」
自分からは、謝ったりしないのですか―――。
ぱたりとムウは歩みを止め、すぐ後ろを歩いていたアイオリアに自分からぶつかっていった。
「む、ムウ……っ!?」
ムウは、しっかりと唇を合わせたのを確認すると、直ぐ様身を翻しアイオリアの腕をすり抜けた。
「これは………」
アイオリアが唇に指をやると、既にそこには先程まで感じていたカサカサした感触はなく。
「……これからは、自分で塗ってくださいよ………」
耳まで真っ赤にしたムウが、弱々しく呟いた。