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――どうしよう、


今、頭の中を占めている言葉。

誤解を解きたい、謝りたい。

意思ははっきりしている。だけど、どうしても煮え切れないのは拒絶が怖いから。

…あんな言葉を吐いた手前、嫌われていたって仕方がないのにね。

授業中も休み時間もその事ばかりでぼんやりとしていた私は、心配そうに亜美に声をかけられてしまった。



(嗚呼、もう。なにやってんだか。)



謝りに行ってしまえば良いのに、そうわかっていても足はちっとも彼の元へ向かおうとしない。

うじうじうじうじ…、自分で自分が嫌になる。

自分で決心が付かない、それと同時に動けないのは向けられている視線がわからないから。

ちらりと振り替えると、急いでドアの影に引っ込んだ赤色。

それは多分きっと、いや、間違いなく丸井ブン太だろう。

彼の横にはやっぱりと言うか、仁王くんの姿があって。

その瞳からは企んでいるような気がしたが、それ以上にこの状況を楽しんでいるように意地悪そうに笑っていた。

クラスの女子は人気者の登場に奇声を上げ、同時に牽制し合う。

女子怖い。仁王くんはそれをものともせず、堂々と立ち、丸井さんに至っては扉に隠れたまま気にしていない、慣れなのか。

結局、話し掛けるタイミングもなく、時間だけが過ぎていく。

でも、移動教室でも何処でも丸井さんの視線がするからやけに気が張ってしまった。

途中で柳くんや仁王くん、ジャッカルくんが話し掛けてくるので余計にドキドキして。

これを見て彼は何を思うのだろうか、やっぱり疑われているのか。

そう思うとどんよりと心が沈む。

はあ、とため息を吐いてお弁当を取り出すと水筒を忘れてきたことに気付いて、また溜め息混じりに購買に来た、


――…のに。




「あ…、」

『……。』




どうしてこのタイミングで鉢合わせしてしまったんだ、自分。

心の準備も出来ていないのに、あまりにも突然のことに思わず身体が固まる。

驚いているのは向こうも同じなのか、小さく声をこぼして目を見開いてからピクリとも動かない。



(どうしよう、誰かジャッカルくん呼んで。)



ふたりで固まったまま目を反らせない。

赤い瞳は、何処か私に似たように揺らいでいるようにも見えた。













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