□彼女しか見えない
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昼、オレは阿部と花井と瀬川としのーかで昼飯を食べた。

その後、阿部と花井は職員室に、しのーかは他クラスのメンバーに練習の事を伝えにいった。

とーゆー訳で。現在、オレは瀬川とお留守番的な状況。




「ねー、瀬川ー。」

『んー、なに?』




読んでいた本を閉じて瀬川は話を聞く体制をとる。

こうだから彼女には話しやすいんだと思いながら口を開いた。




「しのーかって好きな人いんのかな…」

『――…っ、はぁ…』

「なんだよー!溜息って酷いなぁ!」

『べっつにー?またか、なんて思ってませーん。』

「思ってるよね、それ思ってるよね!」




彼女は知りませーん、と言いながらそっぽを向いた。

まあ、いつものことだからもう、ある意味ネタだ。

だからオレがなんだよー。といえば彼女はこちらを振り向いて口を開く。




『はーい、ヘタレクソレの水谷くんに質問です。その質問は今日だけで何回でしょーか?』

「(ヘタレクソレって…)えっとー…」

『はーい残念、時間切れー!』




なんだか怒っているかのような口ぶりに少し恐怖があったのは、嘘じゃない。

なんかオレ怒らせるような事したっけ…




『今日だけで5回目。5回目だよ!いー加減飽きるわ!』

「飽きないでよ!?」

『いやいやいや…1日5回以上だよ?なら1週間で何回になると思ってるのさ!!』

「に、にじゅう、ご回、以上…」

『ピンポーン、正解。判ったかこのやろう!』




正直、ぐうの音もでません。

オレ、そんなに言ってたんだ…少し反省した。




「この話になると瀬川って冷たくなるよねー…」

『っ!んなことないよ。千代好きだなーって呆れてるだけさ、』

「…うん。」

『………ごめん、トイレ。』




ガタンとイスを音を立てて立ち上がり教室から出て行った。

顔が見えなくて、オレは怒らせたかな。なんて思ってた。






彼女しか見えない

オレは知らなかった…


瀬川のこと、知ろうとしてなかった。

オレは彼女を頼ってたのに、気づかなかった。


だって、


――…オレはあのコが好きだから





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