□…そして壊れた、本当に壊れた
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朝、教室に入ればもう阿部としのーかが居て、話しかけれなくて、重い空気がオレたちを包み込んでいた。

あれから幾ら考えてもオレには判らなくて、イライラしていた。

そして、瀬川が花井とクラスに入ったところで更に空気が重くなるのを感じた。

それはみんな何が原因かわかっているみたいで、オレ一人だけが判らなくて。

イライラだけが募って、俺は口を開いていた。気に留めていたことが全部口から飛び出して、叫ぶように飛んでいく。

オレは勢いのまま阿部の胸倉を掴んで怒鳴るように叫んでいた。

それを止めようと手を掛けたのは瀬川で、オレは勢いに任せてそのまま瀬川の胸倉も掴んで口を開く。




「邪魔すんなよ!阿部じゃないなら、泣かせたのは神崎の所為なのかよ!」

『!』

「ばっ、水谷っ!」「落ち着け、水谷。」




阿部も花井も慌てて放させようと手を伸ばしてきているのは目の端で見えていた。

だけど、それより何故か目の前の瀬川の表情にオレは戸惑いを隠せなかった。

そして彼女は俺の腕を掴みながら自虐気味に笑い、爆弾を投下する。その爆弾は止まらずに進む。




『…千代は、阿部が、好き、なんだよ。』

『で、阿部は、自分で言うのはあれだけど、あたし神崎真央が、好き。』




息を呑むしかない、何も口を挟めなかった。口が動かない。手の力が抜ける。

ゆっくりと胸倉から手が離れる。そして彼女は最強の破壊力を持った爆弾を最後に投下した。




『あたしは…、あたしは…、あたしはキミが好きなんだよ、水谷くん。コレが答えなんだよッ!』

「っ。」




唖然とした、彼女が涙を流して目の前から走り去っていくのは見えていた。

阿部と花井が彼女の名前を呼んだのも聞こえていた。でも、動けない。彼女の言葉が痛い。

花井が舌打ちをして、教室のドアまで走る。ふと止まって花井はオレを見つめた。




「…言っとくけど、最近とかじゃねーよ。お前が篠岡を好きになった時くらいから…、それより少し前から由梨はお前の事が好きだったんだよ。」




言い切って、花井は教室から走り出ていった。その言葉もオレに大きく刺さる。

オレをずっと好きだった?瀬川が?瀬川がオレを?

頭はこんがらがって行く。理解できない、いや理解したくない。

オレは瀬川に相談していて、その瀬川はオレが好きで。オレは…アイツを傷付けて、いた…?




「は、はは…ははは…」




乾いた笑みしか出てこない。

そういえばしのーかの話をしている時いつも彼女は下を向いていた。そういえばしのーかの話をした後はいつもトイレに向かっていた。

その後はどちらも笑っていたけれど、どうしてどうして気づかなかった?





…そして壊れた、本当に壊れた

今更気づいた。
いつも彼女は笑っていた。
いつも無理に笑ってた…

オレが彼女を傷付けてた…







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