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□それは確かな変化。
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あれから2週間。
あたしと千代と阿部と水谷くんは、上手いぐらいに席替えでバラバラになった。
そしてそれに合わせて梓と合わせて5人で話すことが無くなり、3人とそれぞれ話すことも減った。
阿部はどちらかと言うとあたしが避けている。
今更になってどう接したらいいのか判らなくて。普段っていつもってどうだったか接し方が判らなくて。
阿部はそんなあたしを判っているようで、苦笑気味でよく目が合う。
その度にあたしは申し訳なくてどうしようもなくて、目を逸らしてしまうんだ。
好きな人に無視されるのは辛いってあたしが一番わかってるのに、あたしは阿部から逃げる。
千代とはあれから数日後にふたりっきりで話した。
ふたりで息が上がるまで言い合って、目が腫れるほどに泣き合った。
まだまだお互いにギクシャクしているけれど、少しだけ吹っ切れてそれなりに話す。
水谷くんは、目も合わせてくれなくなった。会話も挨拶さえ交わさない。
声をかけても返事は返ってこないで無視される。その時の水谷くんの表情は辛そうで。
そんな顔は見たくなくて、あたしは『ごめんね』と呟いてから話しかけるのを止めた。
話せないのは辛い、目も合わせてくれないのは苦しい。だけど笑ってくれないのはもっと嫌なんだ。
理由はわかってる。
千代も水谷くんもあたしに遠慮しているんだ。だって、一番の変化がふたりにあるんだから。
ふたりは付き合い始めた。
あの後水谷くんは再度正式に告白して、千代がそれを迷って迷って受けた。
それを知って、あずがあたしを心配してよく行動するようになった。
確かに辛いんだ、苦しいんだ、哀しいんだ、ふたりが一緒に居るとこを見るとね。
だけど、ふたりともあたしと話してるときより幸せそうなんだ。千代も、水谷くんも……笑ってるんだ。
そんなの見たら、何も言えないじゃん。ふたりは前に進みだしてるんだ。あたしは止まったままだけど。
「…由梨。」
『大丈夫、大丈夫だよ。あず…さ。』
それは確かな変化。
痛いけどふたりが正しいんだって頭で判ってるから、大丈夫。
あたしが変わらなくちゃいけないんだ
あたしが進まなきゃいけないんだ
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