□判らない、解らない、だけど
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オレはただ普通に今日も部活をして、篠岡とみんなで帰って、今日を終えて。

今日あったことを明日瀬川に伝えて、阿部に怒鳴られて花井に助けられて篠岡を好きだと思って。

それを繰り返すんだと思っていたのに。



目の前の状態に頭が追いつかない。

何が起きているんだろう。



阿部が消えて、篠岡が呼びに行って、モモカンがそれを止めるように行って。

判らないまま篠岡を、ふたりを追いかけて図書室にたどり着いて。

篠岡がそのドアを開けようとしていて、声をかけようとしたときに阿部の声が聞こえて。

それで、阿部はなんて言った?




「俺は由梨が好きだ。」




それは列記とした告白だった。

阿部は瀬川が好きだったのか、なんて軽く思ったら篠岡がドアに寄り掛かって。

そこからが早かった。

阿部と瀬川がこっちを振り返って、オレ達に気づいた。

瀬川はなんともいえない表情で大きく目を見開いて。

長い間彼女と目が合っていたような気がした。

でも、それよりオレは篠岡が動揺して駆け出したほうが驚きだった。



泣いていた。



いつもにこにこ笑っていた篠岡が泣いていた。

何で泣いてるのか、どうして泣いているのか、泣かせたのはふたりなのか。

何にも判らなくて、固まった後オレは叫ぶように篠岡の後を追いかけた。

後ろで瀬川がオレを呼んだ気がしたけれど、俺の頭の中は篠岡で一杯だった。



なんで、どうして。



そればかりが廻って。グラウンドについてももう彼女の姿は見えなくて。

監督に聞けば早退をしたと、淡白に帰ってきた。

それからまた疑問ばかりが頭を廻る。でも何も答えが出なくて、判らないことばかりだった。





判らない、解らない、だけど


しのーかが泣いたこと。
ふたりが関わっていること。
オレはなにも出来なかったこと。

それだけはわかって。
ただかなしいきもちがあふれた。







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