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□50 エピローグ
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8月、全国大会決勝戦
試合会場のドームの外、そのテニスコート。
何人ものテニス選手が、息切れ切れに座り込んでいる。
足音を立てずに中に入り、その1人にバサッとタオルを頭に落とす。
「…見に行かねーのか、アーン?」
『行くよ。先にお疲れのアンタにプレゼントさ。』
「ハッ、言ってろ。」
『お疲れ、景吾。』
大量のタオルとドリンクをそこに放置し、言葉を待たずにコートを出る。
足を速めて、彼を先回りして客席直前の通路の壁に寄りかかる。
コツコツと靴音に顔を上げて、背を壁に預けたまま目を合わせる。
『お目覚めかな、少年。』
「…もち、待った?」
『ふふ、まーね。見せてくれる?面白い試合。』
「当たり前じゃん?最後まで見てってよね。」
『了解。行ってきな、青学ルーキー。』
その言葉を背に、リョーマはニッと笑って足を踏み出す。
客席へと姿を現せれば、みんながリョーマに視線を集める。
「…来たようだね。」
「…お 待 た せ。」
そして決勝戦が幕を開ける。
あたしも壁から背を離して、ある人の横へ移動する。
彼は横目であたしを見て、ゆっくりとその場を後にしようと足を動かす。
その前に、あたしは彼の着物の裾をしっかりと掴んだ。
「っ!」
『こんなところに居たんだ。……【Samurai】さん。Long time no see!How are you,Nangiro?』
「あははっ…ご機嫌いかが、お嬢さん。」
誤魔化すように笑った後、諦めたように言葉を発した彼。
8年前、“揺り篭”から姿を消した、ボンゴレ門外顧問チームの1人。
【Samurai】こと越前南次郎。
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