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本日木曜日。=図書当番の日。
いつも通り図書室に入り、いつもと同じ場所に荷物を置く。
それからなっちゃんが来る前に返却確認済のボックスに入った本を数冊手に持ちもとの場所に返す、それの繰り返し。
ボックスの中の本が全て無くなったら一息吐いてカウンターに入って椅子に座って読みかけの本を取り出す。
読もうと開きかけた時にいつかと同じように影が出来る。
なんだか顔を上げたくない気になりながらもゆっくりとその影の本人へと顔を上げる。
「学校には慣れたか?」
思ったとおりの人物。
三強「達人」で参謀 柳蓮ニ。
ああ、出来ればこんな勘は外れてくれたらよかったのに。
取り合えず一瞬真っ白になりかけた頭を整理して声を発する。
『…おかげさまで。』
返した言葉に満足したのか、参謀 柳はふっと口元を緩めた。
その笑みにそっと緊張を少し解く。不味いことをしたわけではないようだ。
柳は手に持っていたノートではなく2冊の本を差し出す。
「返却と貸し出しを頼む。」
『…はい。わかりました。』
本を受け取ってそれぞれをコンピューターに読み取り、確認を行なう。
処理が終わり、完了の文字が出たことを確認してから貸し出しの本を柳に渡す。
『返却日は1週間後です。』
ミスなく終わらせ、何とか乗り切ったと思っても柳は動かない。
不思議に思って見上げれば、バチリと目があってしまった。
いや、目はいつもどおり糸目なんだけど。
でも見られてる気がしてるから目が合ったという表現で間違ってないと思われる。
逸らすことも出来ずに見ていると、柳の口がゆっくりと動く。
「少し時間はあるか?お前と話してみたかったんだ。」
『…は?』
思いもしなかった言葉に思わず冷めたような…とにかく失礼な声を発してしまった。
それに気付いて口に手を当てた後小さく謝ると、少し考えるような顔をしたあと、何かを思いついたようにニヤリと笑う。
その言葉を聴きたくなくて耳を塞ぎたくなったが、間に合わずに声は耳に届いた。
「詫びに俺と話せ、水瀬 あやか。」
で、思った。
あれ、柳蓮ニってこんなキャラだっただろうかと。
考えたところで答えは出ない。もともとそういうのは私じゃなくあの子の分野だ。
とにかく逃げ道があるはずもなく、長い沈黙のすえゆっくりと頷くしか選択肢が無かった。
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