□結局俺の脳内は、
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俺が行動したあの日、それから良くも悪くも事態は急変した。



由梨が必死に保っていた均衡を、俺が崩した。いとも簡単に。

俺がこうなることを判ってやったと、あいつが知ったら嫌われるかもしれない。

それでも俺はあの状況がむず痒くて苦しくて、嫌いだった。

結局俺らの関係は諸刃の剣。

席替えのタイミングも合わさり、あっと言う間に話さなくなり避けるようになった。



特に水谷が由梨を。由梨が俺を。



俺が由梨に避けられるようになるのは判っていた。

目が合えば、困ったように哀しそうに目を泳がせてから逸らす。

その動作は堪えるし、正直言えば辛い。

けど、ある意味それは由梨が俺を意識しているわけでもあるから。



俺は耐えられる。待ってやれる。



それよりも驚いたのは水谷と篠岡の事だった。

あのクソレヘタレな水谷がこの状況で告白するのも予想外だった。

そしてそれに篠岡がYESと答えたことにも驚いた。



ふたりは端から見ればそれなりに仲良くやっているように見えた。

部活中も私公をそれなりに使い分けてるし、ふたりは笑顔で居た。

それを見て由梨が傷付いていくことは俺にも悔しかった。

あいつは水谷が篠岡とくっ付いても、まだクソレを見つめていて。

それで寂しそうに哀しそうに目を逸らすんだ。

俺ならそんな顔させない。

そう言ってやりたいけど今俺がさせてるのは困惑の表情。



俺でも笑顔にさせてやれない。



今、由梨を笑顔にさせてやれんのは花井だけだ。

その花井にさえも気を使ったように接するんだけど、花井の方が上手なのか巧くあいつを笑わせてやってる。

悔しいしムカつく。けどそれをさらに上回って羨ましいんだ。

普通に由梨に話しかけるし、話しかけられることもある。そのポジションが羨ましかった。

だから、




「…逃げてるばっかは俺に合わねェ、な。」




呟いて前を見据えた。

まずは俺のためも含めて、俺を見るときのあの表情を変えたい。

俺まで由梨に哀しい顔させたくねェんだ。

あいつの笑顔を…由梨自身を支えてやりたいんだ。



俺は由梨の微笑んだ顔が好きで、笑った顔に惹かれたんだから。







結局俺の脳内は、

あいつの事ばっかり考えてんだ

自分でも気色悪ぃと判ってる

それでも



俺はお前には笑っていて欲しいんだよ









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