□あいつとこいつの関係性
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部活を終え、部室でユニフォームを着替える。

素早く着替え終えて、同じくもう直ぐ着替え終えそうな阿部の肩を叩く。

阿部はボタンを留めながら振り返る、オレは顔を合わせてから口を開く。




「…一緒に帰らねーか?」

「…ああ。判った。」

「じゃ、行くか。…お先ー、気をつけて帰れよー。」

「…」




阿部は一呼吸置いてから、誘いに乗った。

鞄を肩に掛けて、部員に声をかけてから部室を出る。阿部は無言で俺の後についてきていた。

お互いチャリを取りに行き、それを押し歩きながら帰り道を進む。

オレはゆっくりとそのペースで足を動かしながら、口を開く。




「阿部…お前、これでいいのか?」




これ、に含まれた意味は広い。

水谷との関係も篠岡との関係も、何より由梨との関係のこと。

アイツだって阿部だってっ判ってるはずなのは、オレだって理解している。

それでもお互いに傷を舐め合う様に付き合っていることは、傷付くことに変わらない。

阿部は堅く閉じていた口をゆっくりを開く。




「…良くは、ねェよ。」

「…阿部。」

「良くはねェけどっ!良くはねェけど…いーんだよ。」




阿部が足を止めた。

同じように足を止めて阿部を振り返る。

阿部はオレを真っ直ぐに見つめていた。




「利用されよーとなんだろーと、それでアイツが笑ってくれんなら。」

「…」

「俺はそれで充分だ。俺の隣で由梨が笑顔で居てくれんならよ。」




阿部のその言葉には、嘘も偽りも感じられなかった。

只少しだけ憂いに揺れていたけど、それでもこいつは確かに由梨のことを想って行動しているのが判った。







あいつとこいつの関係性

赤の他人がただ見ただけなら、
間違ってるって止めてしまうんだろう
この恋をずっと応援してるなら、
どこまでも背中を押してやるんだろう

けど、全部見てきた中途半端なオレには
止めるのも押すことも何も出来なかった…


相変わらずオレには何も出来ない









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