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黄色い歓声が響く体育館。
16番のユニホームを着た彼が綺麗なフォームでボールを放ると、バスケのゴールに吸い込まれる。
ゴールが決まるとさらに一斉に歓声の熱が上がる。
「今決めたのは光くん?馨くん?」
「どっちでもいいわ、どっちも素敵!」
双子の相方と交代する形でブレイクを取ると彼に近づくのは取り巻きの一人。
見分けもつけないで光を馨と呼ぶが、慣れたと言って冷めた様子でドリンクを喉に流す光。
ピーとコートに響いた審判の笛の音に、彼の表情は一転してコートへと駆けて行く。
「馨!」
「担架を!直ぐに医務室へ!」
倒れた馨は痛そうに顔を歪め、右足を抱えるように手を当てる。
直ぐに担架に乗せられる馨に切羽詰ったように駆け寄る光に、コーチは試合に戻るように口を挟む。
「光くん、早く…「だまれ…っ」」
「光…」
目の色を変えて、コーチの言葉を遮る光に、馨は顔を歪めながらも彼の頬に手を添える。
添えられた手に自分の手を重ねる光。
「落ち着くんだ。僕の痛みを感じ取っちゃいけない。いいな、怪我しているのはお前じゃない…」
「馨…無理だ。…痛い、痛いよ…馨…」
担架に寝かされる馨に顔を埋めるように下を向く、光の瞳には涙。
――おまえの痛みは、僕の痛み
誰に理解されなくても良い
僕らはお互いさえ居れば生きていけるから…――
*何故か外、しかも雨。
「…君たちが、羨ましいな…」
「…須王先輩…」
「そんな風に支え合える相手が居て…」
傘も差さずに常陸院の目の前に立つ、少年。
その綺麗な金髪が無残に雨に濡れて、彼の白い肌にくっ付く。
そんな事気にならないかのように、須王はふたりを見て眉を下げる。
「で、でも…須王先輩は学院のアイドルで…」
「アイドル、か…。そんなうわべだけの称号でもてはやされるくらいなら……きっと、ひとりの方がマシだ…」
ぐっと胸辺りのシャツをぎゅうと握って、そっと目を閉じて顔を上げる。
変わることなく、雨は彼の頬を打て伝っていく。
――傷付いた心と心が交差する…
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