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美術室に完成した絵が飾られていく。

先生の手によって並んでいく絵をぼーっと見つめていた。

全ての生徒の絵が飾られて、用紙を配られ飾った絵からいくつか選び、感想を書くように言われる。

用紙に下敷きとシャーペン、消しゴムを手に飾られた壁を見上げた。




「まさか、水瀬がこれを出すとは思わなかったぜ。」

『…ジャッカルくん。』




隣に立ったのは同じ選択を取っているジャッカルくんしかいない。

見上げた先にある絵は、私が描いた一枚の人物画。

真田さんの黒い帽子、柳生くんの眼鏡、柳くんの髪型、赤也の髪色、ジャッカルくんの肌色、仁王くんのシューズ、丸井さんのラケット。

そして、なにより…。




「これ、幸村のフォームだよな。」

『やっぱ…、わかっちゃうか…。』




たったひとり、ボールを打つ瞬間を描いた。

そのフォームは、綺麗で崩れることない、真っ直ぐとした、幸村精市さんのフォーム。

私は彼らを選んでこの作品を出した。

今、私が一番はっきりした感情で正直に描いた絵だって言い切れる絵だから。




『…幸村さん、怒るかな。』

「そんなことねーだろ。」

『そうだと、いいけど…。』




伏せ目がちに呟いて、そっとその絵を見直す。

この絵が、好きだ。そういえる。

でも、他の人から見たらこれはどう映るんだろう。

私を嫌いと言った、丸井さんには…?




『…私、丸井さんと仲直り、できるかな…。』

「水瀬…。」

『こんなことジャッカルくんに聞くのはずるいね。どの言葉をかけて欲しいかもわかっちゃうし、ジャッカルくんは優しいから…』

「あいつだってこのままは嫌なはずだぜ。」




半ば遮るように、ジャッカルくんがはっきりとその言葉を言った。

はっとしてジャッカルくんを振り返ると、彼もまた私を見て、優しく微笑む。




「ブン太は意地っぱりだから。それに見たまんま子供っぽい。」

『それは…。』

「でも、あいつだって喧嘩したままは気分悪いって思ってる。だから、大丈夫だ。」

『ジャッカルくん…。』




ぽんっとジャッカルくんの手が、私の頭に乗っかった。

大丈夫と言うジャッカルくんの言葉に、表情にすっと心が軽くなる気がした。

胸の前でこぶしを作って、もう一度描いた絵を見上げる。

その絵を見つめながら、逃げることの無いように彼に謝ろうと心の中で呟いた。














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