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水瀬あやか、2年I組。転校生、図書委員、仁王やジャッカルと仲が良い。
俺が知る、アイツの情報。
上げてみれば片手に数えられるほどしか俺はアイツのことを知らない。
…嗚呼、もうひとつあった。
――アイツは俺、丸井ブン太が嫌い。
「…、うわ、だっせ俺…。」
自分で考えておきながら、自分で言った癖に、酷く傷付いているのは俺の心。
何であんなこと言ったんだろう。
そんなの自分で一番分かってるくせに。
「ブンちゃん、どうじゃ?何かわかったん?」
「…うっせ、」
仁王は俺に向かって惚けたように、わざとらしく首なんて傾げながら近づいてくる。
観察、それは仁王が言い出したことで俺はアイツを初めて認識して見た。
かなり不自然でいけないことをしている、ストーカーみたいだか今は知るかんなもん。
観察すればするほどアイツは何処にでもいる奴で、俺が見る女子じゃなくて。
「…あー、くそ…っ!」
――アイツがちゃんと言ってくれれば?
――ジャッカルが止めてくれれば?
――アイツじゃなくてなっちゃんが出てきてくれれば?
嫌な人のせいの言い訳ばかり、自分を正当化させたくて。
でもわかってんだよぃ、そんなの間違ってんだろぃ。
――…結局は、俺のせいだ。
自分の目で見た、理解もした、じゃあ後は謝って…、謝ってやり直したいだけなのに。
そんなに簡単に謝れないのは、俺の中のちゃちなプライドが邪魔をしているから。単に俺がビビってるから、かよぃ。
がしゃがしゃと髪を乱暴にかいて、頭を垂れる。胸がモヤモヤして気持ち悪い。
昼を呼びに来たジャッカルが俺を見て、酷く困ったように笑うからそれは酷い顔なんだろう。
で、何時ものごとく購買に来た…、
――のに…、アイツと鉢合わせるし。
何とも言えない微妙な空気が俺たちを包んで、購買で不自然に話す俺とアイツ。観察して見たジャッカルや仁王、それに柳と話している顔とは違う、強張った表情。
それが何だか、寂しいなんて…んなこと思った俺はどうかしてんだろぃ。
半ば押し付けられるようにして手に持つ袋に目を落として、口を紡ぐ。
勝手に俺とジャッカルの飯を買って、勝手に一方的に謝って。
(何でそんなに俺の先を行くんだよ。)
悔しいのか、寂しいのかわからない、変な感覚が燻る。でも目線を上げてみれば、目に写ったのはひたすら俯くアイツ。
――いっぱいいっぱいだったのは、俺だけじゃなかった。
息が零れ、肩の力がふっと抜けた。強ばっていたのは俺もだったよぃ。
やっと口元だけ緩めて、アイツの手首をやや強引に掴んで直ぐに走り出した。
後ろで戸惑うアイツの雰囲気がしたが、知らないふりで転ばない程度の速さで走る。
俺の謝罪も聞いてもらわねーとならないだろぃ?
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