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授業を受けながら視線を黒板から窓の外に移し、頬杖をつきながら青く広がる空を呆然と見つめる。
先にある梅雨を感じさせる前の、春の快晴が酷く目に焼きつく。
視線を下に移せば、体育の授業で生徒が疎らに分かれ各々記録取りなのか走ったりボールを投げたりしている。
その中に目立つ、赤の髪や銀の髪を見付けて、後を追うように視線を滑らせた。
ジャッカルくん、仁王くん、赤也、柳くん、柳生くん、丸井くん。
私の回りにテニス部の知り合いが増えていく。友人が増えていく。
でも、前みたいに酷く嫌な気持ちにも、もやもやとした気持ちにもはならない。
――これでいいのだ、きっと。
無理に避けることも、必要以上に関わることもしなくていい。
私の友人に彼等が居て、彼等の広い人脈の片隅に友人として私が居る。
その距離感でいい。私は彼等とどうなろうとしているわけじゃないんだから。
『!』
ふと顔を上げた銀色の彼と目が合ったような感覚にきょとんとすると、彼は隣の赤い髪の少年を呼び止める。
何か話しているのかふたりが見合ったと思うと彼等は校舎を見上げ、赤色の彼がきょろきょろと頭を動かす。
ぱちりと彼と目が合うと、ふたりは顔を見合わせて考えられないくらいに優しく笑う。
大きく手を振る丸井くんと、それを見て苦笑気味に笑いわざとらしく呆れたというジェスチャーをする仁王くん。
それが酷くふたりらしくて、窓に向かって笑ってしまった私は、端から見れば不審者だ。
まあ、それも良いだろう。この世界(此処)で友人を見付けられたのだから。
『…信じて、か。』
不意に思い出したのは、菊の花。
そして、幸村さんのことだ。
(私は彼に何ができるだろう。)
俺を信じてと、伝えてくれた彼に返せるのは彼を信じることだろうか。
彼の勝利も実力も才能も努力も信じているつもりだ、私には無いものだから。
でもわかっている、彼が信じて欲しいのはそれじゃない。いや、正確にはそれ以上に信じて欲しいのはそれじゃなくて。
然程時間は立っていないのに、酷くあの花を見に行きたくなっていた。
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