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「はよ、起きや。」
頭の中で声がなった、なったというよりは響いた、の方が正確かも知れない。
でもこの声は知らないし、知り合いに関西弁使う人もいない声の低さで男の声だとはわかるけど本当に知らない。
さらに言えば、起きろ、とはどういうことなのか…だって私は…。
(私は…死んだ、でしょう…?)
あの嫌な感触を忘れた訳ではない、だけどあんなに動かなかった身体が動く気がした。
だから私はゆっくりと瞼を上げて世界を見る。
「やっと起きたんか。」
『……。』
瞼を閉じた。
…ん?なんか目の前に滅茶苦茶派手で不思議なオーラを持ったイケメンさんがいらっしゃったような…
「ちょっこら、狸寝入りはあかんで。」
てかなんで関西弁?
ともかくずっとこうしている訳にもいかずもう一度目をあけた。
『…あの、近い…んですが。』
「もうちぃと反応せんか、自分も女の子やろ。」
『遠慮します、こういう性格なので。とにかく離れてくれません?』
起きたいんですが、と付け加えればそうかそうかとあっさり退いてくれた。
うーむ。見た目よりは、いいヒト。なのかな…
ゆっくりと起き上がって身体を見る。
身体何処を見ても怪我なんかないし服も真っ白で血の赤なんてない。
手を開いて閉じてじーっと右手右腕をみる。ピクリとも動かずにありえない方向に曲がった右腕がまだ鮮明に頭に残っているのに。
この身体は何処にも異常がない。
でもアレは、確かに身体が死んだ音で…。
アレは確かに"死"だった。
『なん、で…ここは何処、何?貴方は、誰…。』
「ワシか?ワシは焔や。ここは世界の狭間。ワシはここの責任者、自分たちの云う神やな。」
『――…つまり私、は…。』
「…自分は死んだ。あの事故でや。」
(ああ、やっぱり。)
あの感覚は間違いなく"死"だったのだから。
恐怖からか哀しみからか苦しみや後悔からか全然判らなかったけど、きっと全部だったと思う。
涙が溢れて止まらなくて、ボロボロと頬を伝い膝の上に作った両拳に落ちていった。
焔という神と名乗った男はそんな私を慰めるわけでもなく悲痛そうな表情でじっと見ているだけだった。
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