□13 苦渋
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『…あーあーあー、結構やられたなァ。』




部室にはあたしだけ。

レギュラー陣は、抵抗しないあたしに気が済んだのか、「もうイジメるな、」とだけ言って練習に戻っていった。

手塚や不二、リョーマはあたしに声をかけようとしたがあたしは目だけで出て行くように促した。

3人はまた、あの表情を作ってゆっくり部室を出て行った。

今井はレギュラーに連れられて出て行き、ここには居ない。

で、今の呟き。




『上手いぐらいに制服で見えないとこばっかり蹴りやがって…』




床に寝たままの状態で、仰向けになって自分の身体を見る。

身体中は砂に塗れていて汚く、所々見えるところの肌は赤くはれ上がっていた。




『うわー…これは明日青痣になるやー…』




暢気な声で言いながら、ゆっくり身体を起こす。

怪我なんてしょっちゅうの、マフィアの任務をしていたあたしにとって、このくらいの怪我ならば、痛みはそれほど感じない。

多少の痛みはあるものの、身体を動かすことは出来る。

痛みなんて、それほど感じない。簡単に言えば、痛くない。

だけど、




『――…痛くない、痛くねーけど……イタイな、まったく…』




身体の傷の痛みはないに等しい。

だけど、確かな傷はあたしの心にあって。

騙されているレギュラーに殴られたっていうことがイタくて。

手塚たちにあんな顔しかさせられないことがイタくて…


(イタイ、イタイ…イタイ。)


床についている左手をぎゅうと握る。




『…なあ、あたし、間違ってないよね?綱吉、9代目…』




そう、窓から見える青空に向かって呟いてから、グイッと右手で口元を拭う。

ドリンクとタオルの用意をし終えてから、静かに部室を後にした。










(間違ってない、そう言ってくれ…)
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