□君が知らないあたしの本当
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朝、今日は野球部の朝練習が久々になくて学校に着いたら水谷くんが居た。

挨拶しようと口を開きかけて、おはよ、を飲み込んだ。

もう一度口を開きながら水谷くんの方に歩き出す。




『なあーににやけてんの?』

「!なんだ瀬川か、って俺そんなににやけてたっ!?」




なんだ、に少なからずあたしはドクンと傷ついた。

判ってはいたけど、あからさまに意識して無いと思わされるから、胸は苦しくなる。

あたしでごめんねー、と傷ついた心を隠すように毒を吐いた。

水谷くんは慌ててそんなんじゃないよっ!と庇うけど寧ろ悪化した。

そんなんって、今水谷くん、千代を思い浮かべたでしょう?…嫌な嫉妬心。自分が嫌いになる。

そんな気持ちに気づかないフリであたしは笑顔を貼り付ける。




『何ににやけてたのかなあ?』

「な、なんでもないっ」

『ふーん、千代とふたりきりにでもなったのかなあ?』

「ななっ///」




真っ赤になった水谷くん。

あたしは自分で墓穴を掘ったらしい、否定してホシカッタノニ。

でも、そんなことであたしの仮面は外れない。笑顔を張り続ける。

嘘を付くのは微妙、この程度の気がつかないフリは上手くなったから。




『…図星ですかー』

「なななっ///」

『…ほら、お待ちかねの千代だよー。挨拶して来い、ヘタレ』

「う、うるさいー!…行くけどさ…」




ブツブツいいながらも水谷くんは席を離れた。…あたしから離れて千代の方へ向かった。

ったく…




『…キツイなあ、ホント…』

「……馬鹿だろ、お前」




梓があたしによってポンと頭に手を載せた。

仮面ははずした覚えは無い、なのに、やっぱり梓には敵わない。

昔から、梓に嘘も誤魔化しも効かない。すぐにばれてしまう。




『…うるさいよ、あず』

「あずって無意識に呼んだ時、由梨は弱ってるんだぜ。気づいてなかったろ」




その言葉にあたしは何も言い返せなかった。

全く、あたしはまだまだだね…ホント




君が知らないあたしの本当

ねぇ、水谷くんは知らないでしょ?

千代は阿部が好きなんだよ、


――…あたしは君が好きなんだよ…






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