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□彼女の秘密、私の気持ち
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私はマネジの仕事で外野に残っている雑草の草むしりをしていた。
そしたら人影が私に掛かったから、つられるように顔を上げた。
『ちーよっ!』
「由梨ちゃん!」
『はい、差し入れ。』
「ポカリ!ありがと、丁度のどかわいてたんだ。」
『だと思ってさ、草取り手伝うよ。』
影の正体は同じクラスで仲の良い由梨ちゃんだった。
由梨ちゃんはポカリを私に手渡すと私のお向かいに座り込んだ。
しっかり、軍手を用意していた。
「でもっ、焼けちゃうよ?」
『日焼け止め塗りたくってきたから!』
「で、でも…」
『いーのいーの、どうせ口実なんだし。』
彼女はそういうとニカッと笑った。
こくっとのどを通ったポカリが身体に染み渡って熱が冷めてくのを感じた。
「口実って…」
『最近さ、どーなのかと思って。』
「何が?」
『なにって阿部だよ、阿部』
「あべく、ん」
由梨ちゃんの口から出た名前にまた身体が火照り始めるのを感じる。
ポカリをほっぺたにくっ付ける。
『だってすk「Σあーあー!」なに?』
「は、恥ずかしいよ///」
『ここ人居ないのに、』
「そ、それでも恥ずかしいよ!//」
絶対今ので顔赤くなった。
反対側のほっぺたにも同じようにポカリをくっ付ける。
『で、どうなの?』
「どうって…部活が忙しくてそんなの特に無いよ…」
『これもマネジの仕事だもんね。野球部は大変?』
「大変だけど、楽しいよ!由梨ちゃんもやればいいのにマネジ!」
『…あたしは手伝うくらいが丁度いいんだよ、毎日って言うと身体がやばいって。』
「私より体力あるくせにー。」
『それはそれ、これはこれー!』
お互いに笑いあう。
グラウンドに私たちの声が響いた。
「ね、由梨ちゃんには好きな人いないの?」
『……秘密。』
「……」
秘密といった由梨ちゃんの笑顔はとっても悲しそうで切なそうだった。
彼女の秘密、私の気持ち
ねぇ、由梨ちゃんは知らないでしょう?
自分がそんな顔していたこと。
なんでそんな笑顔で答えたかなんて私にはわからない。
でも、それでも、
――…私は彼が好き
*