□逃げて逃げて、
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教室から出て扉を過ぎてから走った。

走って走って、教室から逃げた。

辛くて苦しくて切なくて哀しくて、胸が痛くて痛くて、いたくて…

涙が出そうで我慢して女子トイレに向かって走った。

やっとトイレで入ろうと足を緩めたら、




「ふふ、そーなんだ!」

『――っっ!!』




トイレから2番目に、水谷くんの次に逢いたくないあのこの、

千代の声がして、こんな顔で、こんな気持ちであったら間違いなくあたしはこの関係を壊すことを言う。

千代に向かって言ってしまう。

それだけは阻止したくて、あたしはまた足を動かす、屋上を目指す。

ひとつふたつ階段のやまを上がったところで涙が出てきた。

あとひとつ階段の山を上がれば屋上なのに、その階段を一段上がってあたしの足は止まった。

そしてそのまま崩れるように膝を突いて手を付く。

涙が止まらない。

声を抑えて嗚咽を飲み込む。

膝を抱えるように階段に座り込み、口に手を当ててかみ締める。




『うっく、ひっく…うぐっ…』




判ってたのに知ってたのに、我慢してきたのに、痛くて。

ああ、違う。我慢してたから、ダムが壊れたようにナミダガデテクルンダ。




『ふっぐ…す、き…すき、なの、にっ…ううっ…』

『ひくっ…み…ずたに、く…ん…〜〜っ。』




馬鹿みたいにとまらない。

涙も、好きも、トマラナイ、溢れ出してきて。

あたしは昼休み中そこで泣き続けた。







逃げて逃げて、

『…みずたに、くん』

「……瀬川」

「…由梨、あいつ…」

知らなかった、見られてたこと
知らなかった、阿部が覚悟決めてたこと
知らなかった、関係にひびが入ったこと



でも、知らなかったじゃ済まされない…





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