□ギリギリで成り立ってた関係
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『おはよー』

「はよーっす」




あたしが居て、梓が居て。




「おはよう、由梨ちゃん。花井くん」




千代が居て。




「花井ー!瀬川ー!助けてよー」

「お前、またかっ!」




水谷くんが居て、阿部が居て。


いつものように水谷くんが阿部の怒りを買って、追いかけられていて。

それを千代が可笑しそうに微笑みながら見ていて。

梓は呆れたように苦笑してそれを止めさせるように阿部を説得して。

あたしはその光景を後ろから眺める。


今日もまた昨日と同じサイクルに、正直ホッとする。

今のあたし達はギリギリのラインに立って過ごしているから。

誰かが思いを伝えてしまったら、きっとこの関係は全て壊れる。




『はい、そこまで。阿部も落ち着きなって、相手は水谷くんだよー?阿部が大人になってあげなきゃー』

「ちょ、それどういうこと!?馬鹿にしてる?馬鹿にしてるよねっ!」

「あー…まあ、確かに、な」

「阿部も認めちゃうの!?ふたりして俺の扱い酷くないっ!?」

「『酷くない酷くない』」

「それが酷いよ!?」

「お前らなあ……」

「ふふっ」




阿部と一緒に水谷くんをからかえば面白いように引っ掛かってくれる水谷くん

そんなところが好きだなーなんて思えば、相当重症

でも、そんなこと知らない水谷くんは千代に慰めてもらう

そしたら今度は千代に嫉妬染みた感情を抱く

それを隠すように、水谷くんにドッキリだよと告げる

水谷くんはちょっと怒ってあたしに視線を向けてくれる

それでまた好きだと思う、の繰り返し

馬鹿みたいな感情の揺れ具合。それが恋なんだからまた複雑





ギリギリのラインに立っていたあたし達の関係

(単純なほどに難しい関係は厄介で)

(この関係性は複雑すぎる)








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