◎
□そうやってあたしはまた、
1ページ/1ページ
5時間目、内容なんか入ってこない。
だけど、何事も無くまた一時間が終わる。
珍しく起きていた水谷くんはのろのろと此方に来る。
そして梓の前で阿部の隣に座り込んだ。
それと同時に千代も此方にやってきてその前、あたしの隣に腰掛ける。
『はあー、5時間目って眠くなるよねー!』
沈黙を破ったのはあたし。
話してないと何か違うことを口走っちゃいそうで。
話してないと何か否なことばかり考えちゃう気がして。
「うん、ホントにねむーい…」
それに乗っかったのは、水谷くんで。
思わず頬が緩む。
それを隠すように口を動かす。
『水谷くんはいつも寝てんじゃん?』
「うわ、瀬川ヒドー!」
「ふふ、それは水谷君が悪いよー!」
水谷くんがブーたれて、千代が笑って。
あたしは、ちくりと胸を痛めながらも笑う。
胸の痛みは、知らないフリ、気付かないフリに決め込んで。
「そういえは、由梨ちゃん昼休みいなかったけど。」
『…他クラスの友達んとこに行ってたんだよ−!』
「そっか。あ!目赤くなってるよ?大丈夫?」
『!!…マジッ!?うわー最悪ー寝ないように耐えたのが悪かったのかー?水谷くんみたいに寝ればよかったー!』
「ちょ!瀬川ー!?」
…嘘だよ。泣いたからだよ、水谷くんが好きで、泣いたからだよ。
そう言えたらいいのに、
でもそう言ってしまったら、すべてが壊れる。
だから、あたしは言わない。
そういえば、千代も水谷くんも笑ってくれた。
だから、きっとこれでいいんだよ。
そうやってあたしはまた、
笑った。もうこれが作り笑顔か本物かなんてわからない。
でも、あたしはまた同じように笑った。
――…逃げるように笑った。
だから気付かない、
阿部と梓が話してないなんて、笑ってないなんて、…気付かない。
!