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□何かが崩れる音がした
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あれから2日、結局何も変わらず日は過ぎた。
…何も変わらないと思ってた。
授業が終わって席を立ったら手首を捕まれる感覚。
それにしたがって振り返れば後ろの席の阿部。
『阿部?なに?』
「…今日放課後時間あるか?」
『ある、けど…』
阿部の目が怖い。
知らない、あんな阿部はいつも見ない。
掴まれた手首はまだ阿部と繋がったまま。
「図書室に来い。」
『なに、本当に。いきなりだなあ?今言えないことなの?』
「…ああ。」
笑って誤魔化していつも通りを装っても阿部は揺らいでくれない。
ただ、あたしを真っ直ぐに見るだけ。
真っ直ぐな阿部な瞳はあたしを逃がしてくれなくて。
『…わか、った。』
「…瀬川は馬鹿だからな、忘れんじゃねーぞ。」
『なっ!忘れないし馬鹿じゃないから!!』
いきなり元に戻った阿部に頬が緩む。
阿部は手を離して「ならいーけどよ。」とだけ言って頭を撫でた。
それを払って逃げるように教室を出た。
あんな阿部は知らない。
それが怖くて、恐くて、
握られていたほうの手首を見たら白く変わっていた。
何かが崩れる音がした
阿部のあの目が何なのか、
その時のあたしには判らなくて。
でも、確実に変わってしまうような感覚にあたしには恐怖しかなかった…
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