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ふと、携帯に目を移せばピカリピカリと光りメールを知らせている事と私の財布と私名義の通帳が目に入った。

机の横を見れば、高校で使っていた鞄が立て掛けてある。

鞄や財布や通帳にも気をとられたが、携帯に手を伸ばしてメールを開く。

当たり前だけど、メールは焔からのものだった。




《はよ。昨日はよく眠れたやろか?取り合えず1晩眠って頭がクリアになったと思うて話をするで?そこは立海に近い神奈川の家や。あやかのやから好きに使えばええで。通う学校は立海の中等部。今日から行ける。ここまでは昨日話したな。

で、だ。そっちに新しく、自分の鞄(中身そのままや)とこっちで作った通帳を置いといたわ。作った口座に月に100万は必ず仕送りするでな。お金の心配も無用や。好きにしたらええ。取り合えず伝える事はこれだけや。

何かあったらまた連絡しちゃる。あやかも気軽に連絡しぃや?無理だけはせんといて。約束やからな。んじゃ、また。》




そこでメールは終わっていて。とても焔らしいと思った。

あやかはゆっくりと立ち上がって、鞄と通帳と財布も抱えて抱きしめる。


(ありがとう…、焔…)


お礼を言ってから通帳をリビングの引き出しにしまう。

窓の方を見れば、日が差し込んできているのが判ったので、鞄を開き財布を入れる。

中身は、あの日から変わっていなかった。教科書ノート、筆記用具にタオル。

必要なものは入っていたから教科書だけを取り出してチャックを閉める。

高校の制服に入っていたipodを取り出して装着し、携帯を制服のポケットに滑り込ませて玄関に立つ。

ふと思い出して、携帯を取り出し戸惑いながらも操作していく。




『…、完…了。』




ポチリとボタンを押す。

携帯の中は殆ど真っ白になった。画像もメールも…アドレスも全て消した。

だけど、どうしても消せないものがあった。

あのこのアドレスと待ち受けのプリクラ。その他のあのこのものは消したけれど、それだけは消せなくて。

アドレスは焔とあの子だけ。画像はあの子とのプリクラだけ。


(それくらい、いいよね?)


もう会えないって判ってるから。

シャラッとブレスレットと携帯があたって音を立てたが、そのままするりとポケットに滑り込ませる。




『…いってき…、ます…。』




確かにそう言って、あやかは玄関の扉を閉めた。

確かにそう1歩踏み出した。











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