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その暖かさに涙が止まる。
聞こえる心音に呼吸が落ち着く、震えが静まりだす。
そこで心音、に気づいて振り返って相手を見た。
目に飛び込んだのは太陽に輝き跳ね返る銀色。
銀色の異様な髪が瞳に入って思考を停止させる。
(…うそ、だ。)
この学校は確かに異髪が多いが、この銀髪はひとりしか思いつかない。
それに気づいて巻きついている腕を剥がそうと力を入れる。
でもまだ右腕は確かに震えていて、それを見てまた気持ち悪くなる。
それを抑えながらも必死に声を出した。
『はな、し、て…はなし、てくだ、さい…だいじょう、ぶだか、ら…。』
「…」
銀色の髪を持つ彼、コート上のペテン師は何も言わない。
また荒くなり始める呼吸に気づきながらも震え始めてると判っていてもその腕を剥がそうと力を入れる。
が、所詮男の子の力と女の子(しかも利き腕の右は使い物にならない)の力の差なら、剥がせるわけがなかった。
それでも悪あがきの様に叩いたり握って押し返そうとしてると彼の腕が緩まる。
と思ったら右手を掴まれた、驚きと畏怖感に振り払おうして、出来ない。
『はなしt「黙れ」…!』
「大人しくしんさい。暴れるからまた震えだしたじゃろ。」
『いい、構わない、で…』
「助けてゆってたんが何言うんじゃ。」
聞かれていた、屋上に来たのが間違いだったかもしれないと思う。
それでも強く言い切った彼にあやか何も言い返せなかった。
(いつから聞いてたのか、どうして私に構うのか。…気持ち悪いと思わないのか、な…)
もんもんと考えながら自分が彼の心音に合わせて落ち着いていくのを感じていた。
荒かった呼吸も、流れた涙も、震えた身体も。そして震える右腕も落ち着いていく。
無性に安心感を抱いて、彼の腕から左手の力を抜いてだらんと垂らした。
(どう、して…どうし、て……)
右手はずっと彼に握り締められたまま。
やっと感覚が戻ったように彼の手の温かさと感覚がじわり広がる。
それを同時に痛みも走る。無茶したな、とか思いながら安心したようにやっと頬を緩めた。
結局しっかりと右腕の震えが止まるまであやかは彼の腕の中に閉じ込められた。
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