☆☆

□43 騒動
2ページ/3ページ







『…赤也。』

「!朔先輩、」

『何、してるんだ?』

「っ(…笑ってねぇ…)」




あくまでも、にこっと笑った顔を作り、軽く首をかしげながら赤也を見る。

赤也ははっとした表情になってあたしを見ると、眉を力なく下げる。

その赤也の瞳はうっすらと赤みを帯びて、赤目モードになりかけていた。




『赤也…?』

「だ、だって…耐えられなかったンス…こいつ、朔先輩の事、クズとか言って…俺っ俺っ、」

『…』




彼等を、みんなを仲間と信じたあの日。

あたしとみんなは約束をした。




『ひとつ、護って欲しいことがある。』

『オレがどうなろうと手を出すな。』

『オレに関わることでお前らが傷付く必要はない。…傷付いて欲しくないんだ。』





きっと、あのときのあたしは情けない顔をしていた。

みんな不満そうな顔だったけれど、了承してくれてお礼を言ったんだ。

だけど、赤也は我慢できなくて、自分から言ったのにそれほどあたしを思ってくれてるってことだから。

嬉しくないわけが無いんだ。




『…赤也、』

「朔せんぱっ…せんぱい…?」




赤也に近づいて、名前を呼ぶ。

それに惹かれるように顔を上げたその目に朔は自分の手を翳した。

赤也が不思議そうに、そして不安そうにあたしを呼ぶ。

でも翳した手はそのまま、逆の手でそっと赤也の手を握った。




『…ありがと、ありがとう。赤也。』

「っ…はい!」




そっと周りには聞こえない、赤也にしか聞こえないほどの小さな声でお礼を言う。

その返事を聞いて、ゆっくりと翳していた手を下ろして赤也と目を合わせた。

その瞳は、もう赤くない。いつもの得意そうなその瞳。

にへら、と微笑みかければ照れたように頬を染めながらにっと笑ってくれた。



ほんわかした空気が流れたのに、桃城が水を差す。

それは禁句とした言葉。










次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ