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□44 勝負
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「俺が行くよ。」
そう言って青学側のコートに立ったのは、河村。
それを見てあたしはふっと笑い、こっちもひとり、コートに立つ。
「極限によろしく頼む。」
コートに立ったのは、晴れの守護者“笹川 了平”
了平はラケットをしっかりと握って真っ直ぐなその瞳で河村を見つめた。
「The best of one set match,河村 to serve play.」
加奈のコールが響き、それぞれがラケットを構えた。
青学は先ほどの弱弱しい姿から、勝つ気で河村を応援する。
昨日の夕食後、あたしがみんなに頼んだのは【テニスを教えてもらう】事。
その真意は、テニス初心者に負けたとなれば、流石の彼等も焦りだすと思ったから。
そしてパワーテニスの河村の相手に選んだのは、了平。
『河村は他の選手に比べてパワーがある。だからそのパワーに対抗できるのは了平。でも、それだけで了平を選んだわけじゃない…』
コールとともに試合が始まって、両者がテニスを始める。
「バーニング!」そう叫びながら打つその球は、他に比べたら重そうな球。
それを真っ向から受け止めて、さらにパワーを増やして了平は河村のコートにボールを叩き付けた。
4.5回に1回くらいの割合で了平はその力の所為でアウトにしてしまうほど、コントロールは良くない。
だけれども、了平が打った球を拾おうとした河村のラケットがはじかれる。
「!」
「タ、タカさんがパワー負けしてる!?」
「ふっ、極限にまだまだいくぞ!」
河村はラケットを拾い、ギュッっと握りなおすと打つ。
そのボールはコートの角へと向かう、間に合わないか、と誰もが思う、しかし。
「極限!」パコン!
「!い、いつのまに!?」
「は、早い!?」
『そう、了平はただパワーがあるんじゃない。』
了平からは届かないと思われていたボールの落下地点には既に、了平がいた。
了平は油断していた河村のコートへとボールを打つ込む。
『了平にはボクシングで鍛えられた、足腰の強さとその瞬発力がある。それはテニスであっても強みになる。』
「Game set. Game won by 笹川. 5(ファイブ)games to 2(ツー).」
コールが鳴った。
勝者は了平。了平は丁寧かつ豪快にお礼を言ってからこっちに帰ってきた。
了平に拳を掲げれば、彼もあたしの拳に自分の拳をコツンをぶつけた。
勝ち、ひとつ。
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