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□44 勝負
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放心としたままベンチに戻る、河村。

青学は彼を見つめながらも、入れ替わるようにふたりがコートに立つ。




「英二、いくよ。」

「…わかったにゃ。」




眉を寄せながら睨む様コートに立つ、大石。

どこか不安げで躊躇した様子で立つ、菊丸。




「んじゃ、オレ達の番なのな。」

「…果たす。」




コートに向かい、凛とした様子でコートに立ったのは、雨の守護者“山本 武”嵐の守護者“獄寺 隼人”

ラケットを肩に担いでいつもと違う真剣な目で対峙する武。タバコを消していつも異常に眼つきを鋭くし対峙する隼人。




「The best of one set match,菊丸・大石 to serve play.」




加奈がコールしてそれぞれが指定の位置で、ラケットを構えた。

菊丸と大石のペアは青学のゴールデンペアと呼ばれている。

そのアクロバティック&ボレーヤーふたりの相手に選んだのは隼人と武。




『高い運動神経をもつ菊丸が相手を翻弄し攻撃の要。それを大石がフォローし隙を見てボレーで責める。それに対抗できるのは、隼人と武。』




大石のサーブから試合が始まる。

サーブをしっかりと武が返して、ラリーが始まる。

菊丸も飛んでボールを打つ、けどいつもの切れは無い。どこか大石とも意気が合ってないように見える。




「んじゃ、ま…いってみっか!」

「!何だ、あの構えはっ!?」

「…野球、?」

『一発かましてやんな!』

「野球馬鹿、右奥の角だ。」

「りょー、かいっ!」




武はラケットを野球のバットの持ち方で握って、バッティングの構えで待つ。

隼人は寸前まで相手のコートの隙を探し、一番決まりそうな場所の確立をはじき出して叫ぶ。

それに武はニカッと笑って、勢いよくラケットを振り切った。




「っ!このボールっ!」

「ドライブ回転が半端じゃないっ!」

「おっ、上手くいったようだな!」

「けっ、何でも野球にしちまいやがって。」

『それが武の長所で、隼人が生かしてやれる才能だろ。』




武の打った球はタイミングを外すように、打ち込まれた場所で回転してからはじくようにフェンスへはずむ。

ガシャンとフェンスが鳴って、ボールはフェンスでも回転してからぽとりと地面に落ちた。

簡単に言うならばテニスボールを打ち上げるように、では無く野球で言うゴロボールに成るように打った。

ラケットの面を軽く下に傾け、野球のスイングで上回転を思いっきり掛け叩き付け気味に打ち込んだ。




『武の強みは野球を軸に大抵のものに応用でき、その高い運動能力がそれを可能とするところ。隼人の強みは頭の回転が早く状況を素早く把握して、相手の隙を見つけて怒涛の攻撃が出来ること。』

「Game set. Game won by 獄寺・山本. 5(ファイブ)games to 1(ワン).」




コールが鳴る。

勝者は隼人と武。武はいかにも野球少年風に隼人は適当に挨拶を終えてベンチに戻ってくる。

あたしは同じように拳を作って向ければ、ニカッと武がフンッと隼人が微笑みながらコツンと拳をあわせた。



勝ち、ふたつ。








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