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□44 勝負
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息を上げ、信じられない様子で自分の握ってラケットを見つめる大石。
菊丸は空を見上げるように顔を上げていて、表情は読めない。
フットを顔を下ろして、ふたりはベンチへと戻る。それと入れ替わるようにひとり、コートに立つ。
「…興味深いな、だが、俺は負けないぞ。」
コートに立ったのは乾。
くぃっと全て反射して瞳が見えない眼鏡を中指で押し上げてラケットを握る。
それにあわせて、ぎゅっとラケットを握ってコートに向かいだす我等がボス。
「…こんなことに使うのはどうかと思うけど……、んぐっ。」
『…凪、幻覚頼む。』「…うん。」
「…俺は負けない。とっとと終わらせるぜ。」
手に握っていた死ぬ気丸を飲み込んで、超(ハイパー)死ぬ気モードになる。
大空の守護者でボンゴレ10代目ボス候補“沢田 綱吉”
いつもの瞳は軽くつりあがり、額からはオレンジ色の炎。その炎を凪に幻覚で消してもらう。
「The best of one set match,乾 to serve play.」
加奈がコールして、乾はサーブボールを高くトスした。
乾のテニスはデータテニス。相手のデータを取って計画的にテニスをする。
そのデータは恐ろしいほどに間違いはほぼ無いに等しい、だからこそ相手に選んだのは綱吉。
『正確なデータ、それに基づいて繰り出される攻撃はテニス暦の少ないこちらには不利。だから、少しずるいけれど絶対に勝つ方法がある。』
乾は勢いよくサーブを打ち込む。
最初はそのウォーターフォールに手こずり、打ち返せなかったもののタイミングを掴めば打ちかえる。
1.2ゲームずつ落とし会い、5セット目。その頃にはデータが完成し、的確にポイントを掴んで取れないところへ打ち込まれる。
それを綱吉は見つめて、何かを確認するようにし、そのセットを落とす。だが、綱吉はその終わりに口元を上げた。
「お前のデータは取り終えた、バックのストレートの場合、返ってくるのはクロスの速く低い球の確立82.3%」
「…」「乾先輩、ドンピシャ!」
「だったら俺はこっちに…っ!?」
「え、」
読みきったデータで飛んできたボールににやりと笑うと乾は、データ通りぎりぎり届かないだろう場所へ打ち込む。
いや、打ち込んだはずだった。
「…もう、点は取らせない。」
そこには既に綱吉の姿があり、帰ってきたボールをドンピシャで打ち返した。
乾も青学も驚くがまぐれだと言う、しかしどんなに打っても乾のリターン場所には既に綱吉が居た。
『綱吉は【ブラッド オブ ボンゴレ】…つまり【超直感】がある。相手の筋肉の動き眼球の動きそれら全てから【直感】し予想できる。それは相手の次の一手を封じ込める最強の強みだ。』
「Game set. Game won by 沢田. 5(ファイブ)games to 3(スリー).」
コールが鳴る。
勝者は綱吉。試合が終わると同時にシュゥウウっと炎が消えて死ぬ気タイムが終わった。
帰ってくる綱吉に、微笑みかけてぐっと握った拳を前に出す。それに綱吉も拳をぶつけた。
勝ち、みっつ。
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