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□44 勝負
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乾はデータがあっていたのにも関わらず負けたことに、途方にくれていた。
正直、綱吉が勝ったのは超直感の力が大きいのは事実だ。
しかし、それを返せる位置だったのにも拘らず反応できていない乾が居た。
それは彼が練習をサボったために失った、能力(チカラ)。
乾は、くっと唇を噛み締めると青学のベンチに戻っていく。
「朔。」
『…なに?』
声を掛けられ振り向くと仲間の数人。
景吾、リョーマ、雅治、精市。
彼等の瞳には確かな動揺。何があったのかと目を細める。
彼等はお互いに目配せした後にリョーマが口を開く。
「…あの炎、何?」
『…は…?』
炎、そう言って全員はゆっくりと綱吉のほうを目で確認した。
炎で見当が付くのは死ぬ気モードのときに額に出る、あのオレンジの炎。
『…君たち、見えたの?』
声を小さくして彼等を見つめる。
全員は少し間を置いた後、それぞれコクリと頷いた。
それを見て凪を近くに呼ぶ。
「…朔…?なに…?」
『凪、幻覚…いつも通り構築したんだよな?』
「?…うん、言われた通りボスの額の炎を見えないように…」
『だよ、な…つーことは、こいつ等には何か、ある。例えば、幻覚を使える素質があるとか…だが、一般人の彼等に有り得るのか?もし、そうだったとしてあたしは…いだっ』
「ひとりで考えこんでんじゃねェゾ!」
思考を向こうに飛ばしかけたその時、勢い良く何かに頭を叩かれる。
片目で見れば、リボーンがレオンをハリセンに変えて手に持って仁王立ちしていた。
「今はそんなこといーだろ。発覚してから考えやがれ!」
『…リボーン、うん。そうだね。…景吾 リョーマ 雅治に精市。悪いけど、見なかったことにしてくれるか?』
なんで彼等に見えたのか、彼等に何の素質があるのか、なぜ彼等だけなのか。
何一つ判らないが、やらなきゃならないことがコレではないのは確かだ。
全員、少し不満そうな顔をしたもののゆっくりと頷いた。
それにお礼を言ってから、瞳を閉じて、開き青学を見つめる。
『さあて、あたしと戦うのは…、桃城海堂…お前らだ。』
見た先には、桃城と海堂。
ふたりもまた、あたしを睨んで居るのでバチリと目が合う。
あたしは自分の黒いラケットを一回くるりと回してから、肩に担いでぎゅっと握った。
にやり、これから始まる試合に胸を躍らせて思わず口元が上がった。
(最終試合へ参ります…)