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□50 エピローグ
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『何だよ、折角英語で聞いてやったのに。でも、ま。まさか、アメリカにいたとはね。』
「あれー、バレちゃってる?」
『通りでリョーマの名前呼びがスムーズだったはずだ。あたし会ってるじゃないか、リョーマに。』
「あれー、無視?おじさんのこと無視なの?…て、リョーマと会った?」
『色々あったんだけど、彼の学校で。』
リョーマと精市の試合を観戦しながら、8年ぶりに再会した南次郎と話す。
南次郎は変わっていなかった。長かったポニテの髪が短髪になったくらい。
中身も外見も相変わらずのようだ。
『…息子、大きくなったな。』
「…朔も随分美人になって。」
『何も出ねーぞ。』
「んな言葉遣いばっかだな、お嬢さんは。」
ぐりぐりと頭に手を乗せられて、撫でられる。
その手は、昔とちっとも変わらない。
暖かくて大きくて、テニスだこが出来てる優しくて強い手。
『なあ、南次郎。』
「あ?なんだ、お嬢さん。」
『あたしの所為で、リョーマ…巻き込んだ。…これから先、巻き込むかもしれない。』
「…」
『南次郎がこっちから離れたのに、あたし…引きずり込むかもしれないよ…』
南次郎が離れた理由は知ってる。
家族を想って、表で生きていこうと想ったから。
またもう一度、これからもテニスがしたくなったから。
なのに、今回であたしはリョーマを巻き込んだ。このツケはきっといつか廻ってくる。
「変わんないねー、朔は。」
『…南次郎も変わらないよ…』
「そーだな。俺は変わってないし変わらねーよ。」
『…』
「そん時は、そん時だ。アイツが決めることだろーよ。俺はリョーマを信じてる。リョーマの人生はリョーマのモンだ。」
そう言った南次郎。顔を上げて南次郎を見れば、南次郎も朔を見ていた。
目が合う。南次郎は思いっきり笑っていた。変わらない笑顔。
リョーマの笑った顔と似てる。リョーマが似てるが正しいんだろうけど。
『ありがと、南次郎。』
「んーや、俺は何にもしてねーよ。」
南次郎はまた笑って、あたしは南次郎の隣を後にした。
ありがとう、そうもう一回呟きながら…
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