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□50 エピローグ
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試合は波乱の展開だった。
精市の強さは本物。そして彼のプレースタイルは恐怖だ。
だけど、精市の顔にテニスをしていて楽しそうな顔は無い。笑顔も微笑みも。
ずっとずっと、勝つことだけを考えている表情。そして自分のやり方に傷付いてない振りをしている。
『精市…、テニス…楽しんでる?』
それは青学の目を覚まさせる時にも問うた質問。
(精市…お前は勝つことに拘るあまりに…勝つ事に縛られているよ…)
何故かあたしが悲しくて苦しくて。無様な姿と評されているリョーマの姿にも胸が痛い。
(…リョーマ、見せて。お前のテニス。)
どの学校からも離れた、遠くから試合を見つめる。
『リョーマ、テニスが好きか?』
苦しくても悔しくても哀しくても切なくても痛くても傷ができても…テニスはお前の何か。
その答えはとっくに出てるだろう。
テニスを始めてテニス部に入り、レギュラーになり、テニスを続けている。
それが答えだろ、ここに居る全員が持つ答えだ。
「テニス、面白いじゃん。」
そこからのリョーマは人が違うような動きで、でも終始笑顔だった。
精市はその代わりように驚いているようだった。
どんなに粘っても、苦しいテニスは続けられるわけがないんだ。
勝負はリョーマの逆転勝ちだ。
青学は応援席を飛び出して、リョーマに駆け寄っていく。
立海は赤也が泣いている。だけど戦った精市は何処かすっきりとした顔だった。
『…テニスって面白いじゃん。面白い試合をありがと、リョーマ、精市。お疲れ。』
ゆっくりとお辞儀をして、みんなの顔を確認してそこから背を向け、落ちた。
たんっと綺麗に地面に降り立って、くるりと翻してドームを後にする。
『帰ろう、並盛へ。見回りの時間だ。』
そう言った自分の口角が、緩んでいるのが判った。
(…おめでと、青学。)
嫌 わ れ 篇 E N D