□ズルいあたしの考え事
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「…由梨。」




見上げていた空から目線を落として、幼馴染を見る。

そしてまた目線を空に戻す。

青い青い空。夏に近づいて更に色づく蒼。




「…何処に座ってんだよ、…パンツ見えんぞ。」

『うっさい。』




タンクが置いてあるドアの上に足を下ろして空を見上げたまま言う。

あずは小さく溜息ついてから、はしごを使って隣にまで来る。

こっちを見てから、あずが上を向いたのが判って呟くように言う。




『…このまま…』

「…あ?」

『このまま、あずに頼って隆也を…利用して、うやむやのまま生活してれば、あたしはいいのかもしれない。』

「…」

『…でもね、あず。』




上げていた顔を下げて俯いてから、少し振り返って顔を上げて立ったままのあずを見る。

あずは何故か悲しそうな顔をしていて、それにあたしは苦笑気味に笑う。




『…それは、一番やっちゃいけないことだから。』

「…そうか。」

『…うん。だから、この気持ちも全部片をつけなきゃ。』




あたしのために、何より、隆也のために。



…まだ怖いんだ、この気持ちに【その名前】をつけることが。



だって。あたしは本当にそう思ってもいいのか判ってないんだ。


これが正解なのか、

これは罪じゃないのか、

…誰かをまた傷付けないと言い切れるのか…


全部全部判らない。判らないことばかりなんだ。



それでも決めなきゃいけない。

けじめをつけないといけない。

前に歩き出すために…




「…ゆっくり考えろ。…阿部も俺も待ってやれるから。急がなくて良い。」

『…うん。ありがと…』




あずに撫でられた頭。

相変わらず幼馴染には敵わない。

彼の手は昔と変わらない。大きくて暖かった。





ズルいあたしの考え事

その方法だけは使いたくない。

だから、もう少しだけ。

考える時間を下さい。








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