□変わらない彼女の性格
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気がつけば席に居なくて、ガラスを通して空を見る。

青い青い空。だんだんと夏空へと変わっていく空。

何故だか由梨が弱っているような感じがして、足が屋上に向かう。

屋上の開きが悪い扉を開くと、風が頬を撫ぜていった。

その先に彼女の姿が見えなくて屋上に出てから振り返って【そこ】を見る。

思ったとおり、そこに座って足を軽く振りながら空を見上げ続ける由梨。




「…由梨。」




名前を呼べば、目線を落としてオレを見る。でも一瞬でまたその瞳を空へと戻す。

そのまま悪態をつきながら梯子を使って彼女に近づけば、小さく彼女か呟く。




『…このまま…』

「…あ?」

『このまま、あずに頼って隆也を…利用して、うやむやのまま生活してれば、あたしはいいのかもしれない。』

「…」

『…でもね、あず。』




そこで区切り斜め後ろに立ったオレを少し振り返って見上げる、由梨。

その顔があまりにも泣きそうだったからオレが哀しくなる。

だけど、彼女はそれに気付いてないんだろう、オレを見て苦笑気味に笑って言葉を繋ぐ。




『…それは、一番やっちゃいけないことだから。』

「…そうか。」

『…うん。だから、この気持ちも全部片をつけなきゃ。』




そう言って前を見つめる、由梨。

…その瞳は揺れても尚、前を見据える。


結局、昔から変わらない。

自分より他人のことばっかり考えてる。

自分勝手、何ていいながら最終的には相手のことばかりなんだ。


…なんでコイツは幸せになれないんだろう。

オレは由梨に幸せになって欲しいのに。




「…ゆっくり考えろ。…阿部も俺も待てるから。急がなくて良い。」

『…うん。ありがと…』




呟くことは許されなくて、飲み込んで昔と同じように頭を撫でる。

…今のオレには由梨の頭を昔と同じように撫でてやることしか出来なかった。





変わらない彼女の性格

またコイツは悩むんだろう。

オレには小さな事しか出来ない。

…それでもきっと、俺の絶対は唯一の味方で居てやることなんだ。







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