□期待して躊躇して期待する
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由梨の後を追うように花井も教室を出て行った。

何故か、追う気がしなくて…追わない方がいい気がした。

昼休みが終わる頃に、花井と一緒に教室に戻ってくるのを見る。

その視線に気付いて、由梨が花井を見たあと、こっちに来る。




「…おかえり。」

『!…ただいま、隆也。』




ポツリと呟いた言葉に驚いたように目を丸くしてから、微笑んで返してくる。

あれから俺に笑いかける数が増えている。

それに少なからず喜んでいる俺は、そうとう馬鹿だ。

由梨は1度俯き、しっかりと俺を見つめなおした。その目にザワリと何かがうごめく。




『…今日、部活見ても、いいかな。』




真っ直ぐな瞳にそらせず、でもその言葉にドキリとする。


(それは、俺を見るため?)


変に期待して、ふっと水谷がよぎる。


(それとも、あいつか?)


それでも、間違いなく近くなったという事実に自惚れてもいいんだろうか。




「…確認なんて取らなくてもいいだろ。由梨の好きにしろよ。」

『……ん。』




少し、いや…あからさまにそっけない一言に視線を落とす。

んな、顔させたいわけじゃない。あーったく、と髪を掻きながらワシャワシャとあいつの頭を撫でる。

それにそっと目線を上げる由梨と、目を合わせる。




「…俺だけ見てろ。…だからんな顔すんじゃねぇ。」

『!、うん。』




そう言って笑った由梨に、顔が赤くなるのを感じてふいっと顔を背けた。

笑った後に、切なそうに俺を見ていたなんて気付かなかった。






期待して躊躇して期待する

それだけの言葉に動揺する

一言に揺さぶられる


理由は全部、好きな奴だから










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