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Seiichi.Y Side




やっと見つけた彼女は、俺を見たと同時に目線を下に落としてしまった。

それにいつも騒がれている時とは違う、ドキンと胸の痛みを覚える。

それに蓋をして笑顔を浮かべても、彼女は俺の顔など見ない。

困ったな、と眉を下げて仕方が無いからそのまま彼女に話しかけた。

それでも返ってきたのは、ただの二文字の一言だけ。

彼女に一線何かを引かれているようで。

小さく深呼吸をしてから俺の一番言いたかったことを口にした。




「良かったら、俺たちのマっ…」

『ごめんなさい。』




最後までも言わせて貰えずに、彼女に台詞を被らされてしまった。

ごめんなさい、ただそう言って深く彼女は頭を下げた。

ズキンと胸が痛む。

彼女は確かに、俺たちの周りの女の子たちとは違った。

でもだからこそ、彼女は。




「待って…!」




もう一度深く頭を下げて、彼女は走って去っていく。

手を伸ばして声をかけるが、聞こえているのに彼女は止まらない。

走って追い駆ければすぐに捕まえられるのに、それは出来なくて。

伸ばしてあげた腕を、重力に伴ってはらりと落とす。

そのまま膝を折って、抱えるようにしゃがみ込む。




「…逃げられ、ちゃった…」




きゅっと膝を抱える腕の力を込めた。

近寄ってくる女の子とは全然違う、だからこそ、彼女は…。

俺たちを嫌うとはいかなくても…好んでいないのは確かだ。

彼女に嫌われたい訳じゃない。無理矢理やって欲しいわけでもない。

でも、彼女のような子が居たなら、と…そう思っちゃったんだから。




「…諦めないけどね。」




ぽつりと呟くと、意志が堅くなるような気がした。


(思っていたより、傷付くけれど…)


膝に手を置いて立ち上がる。ぐっと背伸びをした。




「長期戦だよ、水瀬あやかさん。」




彼女の去っていった先を見つめてから、制服を翻して校舎に戻る。

簡単には諦めてあげられない。


俺は君を気に入ってしまったからね。










(弱虫は逃げ)
(神の子は決めた)
(このふたりの勝敗は…?)
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