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結局、あのまま仁王と授業をサボり、担任と廊下で会わないようにと少し時間をずらして教室に戻った。
そのおかげか担任とは出会わなかったが、亜美が心配そうに声をかけてきて申し訳なくなった。
適当な理由をつけると、少し不思議そうだったがそれでもさっきより安心したように微笑んだ亜美。
その笑みに心が表れるのと、なにか嫌な冷たいものが背中を滑っていって思わず身震いしたのは忘れたい。
…次の担任の授業は心して受けるしかないようだ…、うん。
仁王とのあの話に私の胸には何かが引っかかっていて、それから逃げるように午前の授業が終わると図書室に向かった。
今日は火曜日だ。当番なので、お弁当をもってなっちゃんと司書室で食べるのだ。
『失礼します。』
「はあーい?あ、来たわね。いらっしゃい、あやかちゃん。」
『うん。今日もここで食べていい?』
「勿論よ。どーぞ、中に入って。」
にっこりと笑うなっちゃんは私の顔を見ると一層嬉しそうに頬を緩めてくれる。
それがやっぱり姉を思い浮かべてしまうが、私も微笑み返してそれを胸のうちに隠す。
いつも通りの席についてお弁当を広げてなっちゃんを喋りながら、お昼を食べているといつもより早い時間に図書室から聞こえてくる声。
それに箸を置くと、司書室のドアを何の躊躇もなく開けた。
彼女が言ってた、あの少年の話を私はすっかりと忘れていた。
「なっちゃーん!」
『返却貸し出しどちらで…』
「あ…」「ん?」
『…え…。』
司書室を出て広がったのは気まずそうに顔を歪めたジャッカルくんと“あの”赤髪少年。
うん、油断していた自分を殴りたくなった。
思わず引き返そうとしたのを思い直し、適当に笑顔を引っ付けて笑っておく。
『えと…何の御用でしょうか。』
「あれ、お前…えっとーんー…」
『あの…』
「悪い…こいつ、なっちゃん先生の菓子を貰いに来たんだよ。」
私と目が合うと、赤髪少年は大きめの瞳を丸くしてからうーんと悩むように思い出そうとする。
それに戸惑っていると、ジャッカルくんが助け舟を出してくれる。
それに『ありがとう』とお礼を言って、なっちゃんを呼ぼうとドアを振り返りかけた時に彼が指をさした。
真っ直ぐに私を。…その指を曲がらない方に曲げてやりたくなったのは秘密だ。
それでも顔には出さずに止まる、でも彼の口から出てきた言葉に顔が崩れるまで5秒。
「お前、仁王のお気に入りだろぃ!」
『は?』「え?」
「あー、すっきりしたー。つかジャッカルも知り合いなのかよぃ、何か怪しいな。」
赤髪少年は勝手に満足すると、今度は嫌そうな視線をこちらに投げてくる。
私はその言葉にアホ面してから、ジャッカルくんと一度目を合わせて少年を見る。
でもその向けられた視線に、一気に何かが冷えて貼り付けた笑みをはずして同じように彼を冷めた様に見つめ返す。
その目に驚いたのか、少年はまた目を丸くするも疑っている色は消えない。
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