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「朔先輩?…汚っもが。」
「行っとくけどこんなのホストじゃ常識なのー。」
「濡れた瞳に揺らめかない女の子は居ないんだから。ほら、庶民には到底買えない高級茶菓子だヨー?」
『此処に居るけどな。…ま、嘘だって見破れるからだけど。つか物で釣るって…』
「誰がそんな手に………、…くれるの?」
「引っ掛かったァー!」「案外チョロいんスね。」
「…まだまだだね。」
光がハルヒの手に乗っけたのは梅の花をモチーフにした、ピンク色を基調とした茶菓子。
その可愛さにハルヒが一呼吸置いて、目を少し輝かせた。
綱吉と赤也がツッコムがそれも聞こえていないらしく、これを聞いていたお客さんが近づいて来る。
「ハルヒくん、和菓子が好きなのー?」
「あ、いえ。甘いものはあまり…。でも…、母の仏前に供えたらいいかなって…」
ふわりと優しい笑顔で言うハルヒにお客だけでなく、見ていた常陸院や環は少し頬を染めた。
そしてひとつ茶菓子を手に取ると、環が涙を浮かべてハルヒの手に乗せた。
因みに、環とハニーは自力で涙が出せる。更に言うと詐欺師の雅治や仕事上の関係で朔も自在である。
その様子にあたしはふと思って、綱吉を振り返った。
『綱吉や骸も貰っていきなよ。どうせ部費だしさ。フウ太達や凪達に。』
「あ、そっか。そーだね。フウ太やランボ、イーピンはきっと好きだね。」
「クフフ、クロームが喜びそうですね。犬や千種は食べれればなんでも良さそうですが。」
「ご兄弟ですの?」
「いや、正確には違うんだけど。うちで預かってる子ども達なんだ。」
「血は繋がってないのですが、家族です。」
ふわりと笑う綱吉や、いつも以上の柔らかい笑顔の骸に女子が真っ赤になった。
そしてハルヒと同様に、次々と茶菓子が彼等の腕の中に渡されていく。
その様子に笑いながらも、ふと視線を感じて部の扉に目を向ければ女子生徒がこちらを伺っている。
同じくそれに気付いた常陸院兄弟やハニー先輩が声をかけると、生徒はびくりと反応した。
それに態度がなってないと環が叱って、颯爽と近づくと爽やかに手を差し伸べた。
「怖がらないで、お姫様。ようこそ、桜蘭ホスト、ぶふっ!」
「触らないでニセモノォ!貴方がこの部の王子的存在だなんて信じられませんわ!王子キャラたるものそう易々と愛を振りまいたりしないもの!ちょっぴり憂いを含んだ寂しげな笑顔が乙女のハートを震わすものなのに!どうしてそんなにバカみたいなの!?まるで頭の悪いナルシストじゃない!無能!凡人!最っっっ低!」
「っ!?!?」
『…(王子“キャラ”?つかその辺のさじ加減は個人差だろ。なんつーか偏り激しいな。)』
畳み掛けられた暴言に白目をむいた環は、1人スローモーションをしながら倒れていく。
それに常陸院や赤也たちが釣られているのに対し、鳳が何かを考えるような表情。
そしてふと思い出したかのように、顔を上げて口を開く。
「君は…」
「鏡夜様っ!お会いしたかったっ!私だけの王子様!」
そう言ってあたし達の間を走り抜けると、ひしっと鳳に抱きついた少女A。
それを見たホスト部は目を見開いて固まり、抱き疲れた本人の鳳も驚いたような表情を見せた。
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